第270話 四つ葉のクローバー
「やったあっ♡ 可憐はつるつるだあっ! ヒャッハー☆ ヒャッハー☆」
ヒャッハー☆状態の小濱宗治は暫く放っておくことにして、ネル・フィードはアイリッサに詳しい話を聞くことにした。
『天使の力』
アイリッサが言う、その力の真実を。
『アイリッサさん。天使の力とは一体……?』
「あのですね、本当はネルさんの行きつけの喫茶店に行って話すつもりだったんですよ。でもハイドラ君にステーキ屋さんに連れて行かれたじゃないですか?」
『ええ』
「ステーキがまいうー過ぎて。それでそっちのこと、つい忘れちゃって。ぷひ♡」
『大事なことすぐに忘れる。あっ、そういえば、この前の仕事の時も!』
「でね、私は夢だと思っていたんです。ピンクローザさんの繭に包まれていた時のこと」
『実際、あの繭の中でなにがあったんですか?』
「実はですね。繭に包まれた瞬間、私の体が熱くなって光ったんですよ!」
『そ、そんなことが』
「はい。で、すごく気持ち良くなっちゃって、半分寝ちゃってたんです」
『繭から出てきた時、気持ちよかったって言ってましたもんね』
「そこで見た、というか、感じたのが『天使』だったんです」
『感じた?』
「なんていうか、私の体の中から溢れ出るというか、あのピンクローザさんの悪魔の繭に対抗する形で力が出てきてたような気がしました」
『というと、その力がなかったら今頃……』
「ですね。死んでたかも」
悪魔と同様に『天使』も、その存在はないものだと思っていたネル・フィード。さらにアイリッサは不思議で驚くべきことを話し出した。
「ネルさん、知ってる? 探偵ナイトスクープって番組」
『探偵ナイトスクープ? 見たことないですね』
説明しよう。
探偵ナイトスクープとは、複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に究明する視聴者参加型の社会派バラエティー番組なのである。
『ほう。それが、なにか天使の力と関係あるんですか?』
ネル・フィードはアイリッサがなにを言おうとしているのか、さっぱり分からなかった。
「私、子供の頃、その探偵ナイトスクープに出演したがあるんです」
『えっ? アイリッサさんがその社会派バラエティー番組に?』
「はい。私の不思議な力について徹底的に究明されたんです」
『アイリッサさんは子供の頃から不思議な力があったんですか?』
「ん〜、それがですね〜。私ってば四つ葉のクローバーを見つけるのがアホみたいに早かったんですよ!」
『四つ葉のクローバー?』
「四つ葉のクローバーって幸運をもたらすって言うじゃないですか。それを1分で5本は見つけられたんです」
『1分で5本……』
(それは凄いのか? よく分からないが、テレビ番組で取り上げられるのだから凄いのか……)
「私が四つ葉のクローバーを簡単に見つけられたのは、天使さんの声が教えてくれていたからなんです。ねっ? ここで繋がったでしょ? 天使♡」
『アイリッサさんには幼い頃から天使の守護的なものが……』
「そうなんじゃないのかなあ? って、いま思ってます!」
アイリッサには天使の守護がついている。ネル・フィードはまさかミューバでこんな驚きの体験を連発することになるとは思ってもみなかった。
そしてついに、小濱宗治もヒャッハー☆状態から我を取り戻し、可憐を殺された怒りを爆発させる時間がやってきた。
「可憐の血液も、生首も、飛び出ちゃった眼球も、全部全部、美しいけどよぉ……この湧き上がる感情はアンタらに対する殺意以外のなにものでもねぇわなぁ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます