第260話 逆転世界

 小濱宗治の闇の能力『インフィニット・ステアケース』により、異空間へと引きづり込まれたネル・フィードとアイリッサ。


「ヒャッハー☆ ここでは僕が最強! 邪魔者には消えてもらう!」


「悪魔の力、こんなことまでできるのか。異空間とは……」


「な、なんか目が回ってきました。階段だらけで……」


「アイリッサさんは階段の陰で横になってて下さい。彼は私がなんとかしますから!」


「ネルさん、頑張って下しゃいね〜」


 アイリッサはふらふらと階段の陰に行き、倒れ込むように横になった。


「あんた、たいしたもんだな。僕のインフィニット・ステアケースの中で平然としていられるなんてな。本当になにもんだ?」


「答えたら君の目的を教えてくれますか? 闇の能力でなにがしたいのか」


「ヒャッハー☆ そんなの聞いてどうすんの? カウンセリング? 言っとくけど、僕は頭がおかしくなってる訳じゃないからね」


「それは分かっています。君が本当にやりたいと思っていたことが聞きたいんです。死を意識したことで見えた、君の本来の生き方とはなんなのか」


「あんた、エルリッヒさんのこと知ってんの?」


 ネル・フィードの言い回しを聞いて、小濱宗治はそれに気づいた。


「会ったことはないです。存在を知っているだけで」


「そうなんだ。僕は本当に。エルリッヒさんと出会えてね」


「そうですか」

(出たな。運がいい。エルリッヒの専売特許だ)


「彼は僕が先月完成させた作品を見ただけで、を見抜いたんだ」


「君の本質?」


「ああ。僕には生まれ持ってがあるようなんだ」


「脳の障害っ?」


「そうさ。それを周りの人間に気づかれないように僕は生きてきた。なかなか大変だったけどさ」


「脳の障害とはどのような?」


「ヒャッハー☆ 知りたい? ヒントはさっきから言ってたぜ! 分からねーの?」


「ヒ、ヒント? な、なんだ?」


「まったく、五感が腐ってやがる。エルリッヒさんの足元にも及ばねぇよ。あんたはさっ!」


 ネル・フィードはエルリッヒの足元にも及ばないと言われ、仕方なく言うことにした。


「まさか、うんこに関係が?」


「ヒャッハー☆ そのまさかよ! 僕は生まれ持っての美醜びしゅう逆転ぎゃくてんのうの持ち主ってわけさ!」


「美醜逆転脳だとっ!?」


「そうさ。僕にはうんこがとても美しく感じる。そして、彼女、アイリッサさんを醜く感じるんだ。分かる? 美醜逆転の意味がさ!」


「そ、そういうことか。それでうんこを……」


 小濱宗治はさらに話を続ける。

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