第259話 インフィニット・ステアケース
『アイリッサのうんこを描きたい』
こんなとてつもない申し出をする小濱宗治。悪魔の力を手にし、『生き方が明確になった人間』らしい発言だった。
とはいえ、明確な生き方が『うんこを描くこと』とはどういう意味なのか? ネル・フィードは困惑しながらも興味が湧いた。
「アイリッサさん、ちょっとこっちに来ててくれるかな?」
ネル・フィードはアイリッサを自分の後ろに来るように促した。それを見た小濱宗治はムッとした様子。自分のアートの邪魔をするな。そう言わんばかりの鋭い目つきだ。
「僕のアートの為に彼女がうんこをしてくれるつもりなのに、なぜ、あなたが邪魔をするんですか? 許せませんねぇ」
「はあっ!?」
(するわけねーだろ! 私のうんちはネルさんのだけのもの♡ もう! 私も変態になっちゃったじゃない!)
ネル・フィードはあえて小濱宗治を刺激してみることにした。
「初対面の女性にそんな卑猥なお願いをする方がよっぽど無神経だと思ったんですよ。現代アートには品格というものがないのですか?」
「あーヤダヤダ。僕は『降水確率50%の日』と同じぐらい、カッコつける男が嫌いなんだ」
明確に不快感をあらわにする小濱宗治に対し、ネル・フィードは確信をつく。
「単刀直入に聞かせてもらいます。君は悪魔の力を持っている闇の能力者。違いますか?」
『悪魔の力』それを聞いた小濱宗治は、持っていた絵筆をパレットの上に無造作に置くと、手首のヘアゴムで長い髪を縛り、ネル・フィードを睨みながら言った。
「さっきから、なんなんだよ?」
その眼光には、ハッキリと敵意が見てとれた。
「私の正体の前に、君の目的を聞かせて欲しい。うんこの絵を描いていればそれで君は満足なのですか?」
「あはははッ! ヒャッハーッ!!」
小濱宗治は笑い混じりの奇声を上げると、ネル・フィードと少しの距離を取り、独特な構えをとった。
「なんですか、その構えは? 私と一戦交えようということですか?」
「僕の生まれたジャポンという国には世界に誇れるものが沢山ある。その中でも武道は世界を凌駕する。僕はね、絵と同じぐらい武道にも打ち込んできた男なんだ」
「ジャポンの武道ですか。それは厄介だ。柔道、剣道、弓道、空手道、合気道。そんなとこですか?」
「あんたジャポン愛好家? 最近多いらしいけどさ」
「あなたに会う前に、ジャポンについて少し調べてみました」
「やっぱり偶然ここに来たってわけじゃないんだな。闇の能力者のこの僕を、殺しに来たのか?」
「勘違いしてもらっては困ります。私は君を救いたいのです」
「余計なお世話だ。僕は悪魔の力がなかったら今月中に死ぬ運命なんだ。この能力を存分に使い、永遠に僕はこの世界に君臨する。あの方の為にも邪魔をする奴は消すッ!」
ズバッ!!
小濱宗治は両手を広げたッ!!
「ヒャッハーッ☆ インフィニット・ステアケースッ!!」
ズアゴゴゴゴゴォォォオッ!!
「な、なんだっ!? これはっ!?」
「え? ええっ? ええええっ!?」
周りの空間が歪んでいき、さっきまでいた大学の裏路地ではなく、螺旋階段が様々な向きで乱立する異空間に3人は立っていた。
「ヒャッハーッ☆ ここがお前の墓場、そしてアイリッサさん、あなたが僕の目の前でうんこをする場所だ!」
「ふっ、私の墓場ですか。おもしろい」
「こんな奇妙な所でうんち? 私、落ち着かないよー。じゃなくて、するかっつーの!」
異空間での戦い。どうなるっ!?
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