第254話 情報屋たち

 ハイドライドに軽く手を振るその男、大きめのリュックを背負い、キャップに眼鏡。少し太めの体格で優しい顔をしていた。ワルとはかけ離れた容姿だった。


「ハイドライドさん。彼が?」


「そうっす。情報収集のスペシャリスト。通称『アウトドア派』」


「アウトドア派?」


「ええ。あのでっけぇリュックにはその為の秘密道具やらがたくさん入ってるらしいんですわ」


「そうなんですか。確かに見た目は凄いアウトドア派な感じですね」


 3人はアウトドア派と合流。


「おいっす! 急に呼び出すから何ごとかと思ったけど。悪魔? 能力者? 僕そういうの大好きなんだよね。つか今日暑くない? ふい〜」


 アウトドア派は早速そのリュックからタオルを取り出し汗を拭った。


「お前が暑がりなだけだ。それより、じょえは? じょえはどこだ?」


「あー、こっちこっち!」


 そう言うアウトドア派について行った先にあったのは公園。あまり手入れも行き届いておらず、草木が生い茂っていた。


「やだ〜、なんか不気味な公園。こんなとこにハイドラ君の仲間がいるの?」


 怯えるアイリッサにハイドライドは笑って答えた。


「ははっ! もうひとりの情報屋のじょえなんだけどさ、そいつの通り名が『物陰ものかげのじょえ』ってんだよ」


「も、物陰の? じょえ?」


「ああ。じょえは異常な程に人前に出るのを嫌う奴で、俺もどんな顔だったか忘れちまったぐらいだ。そんないい男じゃあなかったと思ったが……」


 その時ッ!


『ハイドライド君、私を侮辱するのはやめてくれたまえ。しかもそんなの前で』


「おっ! いつも通り声だけで姿は見せねぇな! 本当に屁みてぇな野郎だぜ! あははは」


『ぶ、無礼者めがっ! 協力せんぞッ! マジで、帰ろっかな』


「おっと! それは困る。頼みますよ〜! じょえっち!」


「私からもぉ、お願いしますぅ♡ じょえっちぃ〜♡』

(私ってば25なのに美少女とか言われちったぁー! やっぱまだまだJKでもいけるっしょ? 私! ぷひひっ!)


『しっかたないなぁ。ハイドライド君の頼みは聞きたくないが、美少女の頼みとあっては聞かない訳にはいかないというものだな……』


 そんなこんなでハイドライドのチームの仲間である『アウトドア派』と『じょえ』が闇の能力者を探す手助けをしてくれることとなった。


 ネル・フィードは、いま起きている危機的状況を2人に説明した。


「なるほどねぇ。了解っす! 僕のアウトドアで培ったを駆使して、特に最近変わったことなんかが起きてる地域を探して、怪しい奴はチェックして知らせるよ」


「ありがとうございます。アウトドア派さん!」


『じゃあ私はを使って、ヤバい奴がさらにヤヴァくなってないか探ってみるとしよう。美女行方不明事件とドラッグ。特にエチエチ関連は私に任せておいてくれたまえ!』


「ありがとうございます。じょえさん!」


「頼んだぞ2人ともっ! 兄貴がこの世界を悪魔から守ってくれるんだ! その手助けができるなんて光栄なんだぜっ!」


 アウトドア派とじょえ。


 2人の情報屋からの連絡を待ちつつ、アイリッサの弟が通う大学にいるという、ジャポンの3人の留学生にまずはターゲットを絞ることにした。


「あっ、アイリッサさん! そろそろ仕事、戻らなくていいんですか?」


 アイリッサは振り向いて、とびっきりの笑顔でこう言った。


「私、今週、生理が酷くて血まみれで貧血で下痢で頭痛なので休みますって、工場長に言ってきたんですっ! なので大丈夫なんですよ〜♡ てへっ♡」


「そ、それなら、だ、大丈夫だね」

(こ、工場長、一体どんな顔してたんだろう?)

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