第253話 A5ランクの力

 じゅううううううっ!!


「おおっ♡ しゅごいっ! こ、こんな高級なお肉初めて食べましゅよぉ!」


「た、確かに、ソーセージとは一味違うかも……」


「2人ともどんどん食っちゃって下さいよ! ここのはが違うんで! 油もクドくないし柔らかいから、めちゃうまっすよ!」


 A5ランクの肉を満喫しているネル・フィードとアイリッサに、ハイドライドが思い出したように話しかけた。


「そういえば昨日って、兄貴とアイリッサ、マレッドさんといませんでした?」


「もぐもぐっ、ええ。いましたね」


「あっ! そうだ! ネルさん、悪魔人間のことなんですけどぉ……」


「ちょ、アイリッサさん!」

(おっちょこだなぁ。そこが可愛いのだから仕方ないが……)


「あっ! ぷひひ……」

(やべぇ、肉の油のせいで口の動きが滑らかに。なんちって!)


 『悪魔人間』


 あまりにも自然とアイリッサの口から出た、あまりにも仰々ぎょうぎょうしい単語に、ハイドライドは肉以上に食いついた。


「なんすか悪魔人間って? 兄貴っ! 教えて下さいよッ! 今日マレッドさんが休んでることとも何か関係があるんすか?」


「いや、その〜ですよ!」


「強いくせにウソはめちゃへたっすね。そんなとこもかっこいいっすけど!」


「ネルさん。信じるか信じないかはハイドラ君次第ですけど。話してあげません? こーんなおいしいお肉をこれからは食べ放題なわけですし!」


「えっ?」

(食べ放題とは言ってないけど……)


「そうですね。ではお話しましょう!」


「は、はい……!」

(兄貴もお肉に釣られてるしッ! A5ランク肉のパワー恐るべし!)






 ネル・フィードは昨日のマレッドの家での出来事を詳細に話した。ハイドライドは驚きを隠せないでいた。


「そ、そのパウルって野郎がマレッドさんの妹さんを? なんて事だ!」


「パウルを含めた残り6人の悪魔の力を持つ『闇の能力者』を探して倒さなければ、6月6日、世界は暗黒に染まってしまうんですよ」


「あと6人もいるんすね。それは大変だ……」


「そういうことです。なので時間がないんですよ。今ある情報はジャポンからの留学生。そのぐらいで……」


「その能力者って奴らは自分の生き方が明確になって、時には犯罪も犯すってことっすよね?」


「はい。その可能性は高いと思います。このところニュースになってる美女行方不明事件、エチエチとかいう謎のドラッグ。そのへんが怪しいと私は思っているんですけどね」


「ドラッグか。兄貴、俺のチームには情報収集に長けた奴がいるんすよ。能力者探し、手伝わせてくれないすか?」


「え? しかし危険が……」


「兄貴。そいつらをさっさと見つけだして倒さないと世界は暗黒に染まるんすよね? 奴らが単独行動している今がチャンスなんすよね?」


「そ、そうですがっ」


「決まりっすね。今から連絡とるっす。来させますよ」


「いや、待ってください」


「ネルさん。頼りましょうよ! ワルって結構頼りになったりするんですよ!」


「なんでアイリッサさんがそんなこと知ってるんですか?」


「アニメとか? えへへ!」


 20分ほどすると、ハイドライドの仲間から連絡が入った。



 ピコッ! ピコッ!



「来たみたいっす! 行きましょう」


 3人はステーキ屋を出た。


 



「おっ! いるいる。おーい!」


「あっ、ハイドライドー! 来てやったぞぉ!」


 1人の男がそこにいた。

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