第239話 悪魔侮辱罪

 悪魔の糸を自在に操るピンクローザ。その糸は、ダークマター最強の攻撃である『ブラックホール』もかき消してしまう。


 シュルルルルルルゥッ!!


 ピンクローザは口からだけではなく、すべての手指から悪魔の糸を放出できた!


「私の闇の能力! 異議の悪魔糸呪縛ダークオブジェクションで美しくパッケージして最高のスイーツにしてあげるわぁっ!!」


 ギュルルルルルルルルゥッ!!


「ぶ、ぶひゃあ─────っ!!」


「ア、アイリッサさんっ!!」

(ど、独特な叫び声だっ!)


 アイリッサがどんどん糸で包まれ繭になっていく!


 ネル・フィードはアイリッサに駆け寄ろうとするが、10本の糸が体にまとわりつきそれをはばむっ!


異議の悪魔糸呪縛ダークオブジェクションを使えば、あなたの動きを封じることなんて容易いわ。その糸1本1本が、まるでつまらない法律のようにあなたをがんじがらめにするってわけなのよ! お洒落でしょ?」


「動けそうで動けない! 糸の牢屋に閉じ込められているようだっ……!」


 ネル・フィードが動けず、もがいているうちに、アイリッサは完全な繭状態になってしまった。


「……アイリッサさん、少しの間、我慢してて下さいね」


「動けないくせになに言ってるの? 次は姉さんも繭にするんだから!」


 ネル・フィードは不利な状況でも冷静な表情だった。そして言った。


「ブラックホールを消されたことには正直驚きました。どうも『悪魔の力』と私の『ダークマター』は似た属性にあるようです」


「ダークマター? それがあなたの力の名前? 初耳だわ」


「ですが、似ているだけで私のダークマターを凌ぐということはなさそうです」


「バカを言わないでくれる? 私の手に入れた悪魔の力は神と同等。人間のエクソシストやらになんとかできるものではないのよ!」


「神と同等? 私はですね。実はその神を喰らう者、神喰いなんですよ」


「神喰いですって?」


 ぶしゅうううううっ!!


 ネル・フィードを真っ黒な暗黒が包む。その姿はマギラバになり、体にまとわりついていたダークオブジェクションも溶けるように消えていく。


「そ、それがあなたの正体っ!? 闇そのものがっ!?」


『アイリッサさんには見せたくなかったのでちょうどよかったです。彼女が繭に包まれている今なら、この姿で全力で戦えます。ゲスな悪魔、覚悟して下さい』


「悪魔を侮辱するな。刑法231条に抵触するわ。1年以下の懲役もしくは禁錮。または30万円以下の罰金。いえ、私としたことが途方もなく間違えたわね……」


 ブチッ! ガンッ!


 ピンクローザは胸に輝く弁護士バッヂを壁に向かって投げ捨てた。


によりっ!! 目んくり玉えぐり取ってからの、死刑確定だったわあっ!!」


 ギュパアアッ!!


 ギュパアアアア────ッ!!


 ピンクローザの悪魔の糸が、一斉にネル・フィードに襲いかかった!

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