第238話 デザート
ピンクローザは紅茶を飲み干した。
「お話はここまでにしましょうか」
それまで流暢に話していた『留置所の男エルリッヒ』の話はピタリと終わってしまった。
「ピンクローザさん。あなたはその朽ちた教会で誰に会い、悪魔の力を得たのですか? 聞かせてくれませんか?」
「教えませんよ。偉大なあの方に関することを私が口にするなんて、もってのほかなんです」
「そうですか。残念ですね」
(ピンクローザ、悪魔確定。いつでも戦闘に突入する準備は整えておくか)
「ネルさん。私は悪魔の力を得ました。そして、本来の自分の生き方が明確になったんです」
「先ほど言っていたように、死を意識したあなたは本来の生と向き合い、生まれ変わることができた」
「そういうことです。じゃあ、デザート、用意しますね」
ピンクローザはキッチンの大きな冷蔵庫からラップのかかった小皿を取り出すとローテーブルの上にサラリと置いた。
「これって。あはは。最近流行ってるグミとかじゃあ、ないですよね?」
アイリッサは完全に怯えている。
「ええ。グミではないですねぇ。これは人間の眼球です」
ピンクローザはそう言って、皿のラップをペリッと剥がす。コロリと4つの眼球が3人を恨めしそうに見つめている。
「ローザ! これ、ま、まさか?」
マレッドが真っ白な顔で、悪魔となった妹に聞きたくないことを聞いた。
ピンクローザはひとつ眼球を摘み、ペロリと舐めてから言い放った。
「そうよっ! くそ
マレッドは一瞬で気を失った! ネル・フィードとアイリッサはソファーから立ち上がり、ピンクローザと距離を取る!
「アイリッサさん! そっちの部屋に隠れてて!」
「は、はいっ!」
アイリッサが隣の部屋に入ろうと、ドアノブに手をかけた。
『逃すわけないわよねぇっ!! かああぁぁっ───!!』
シュルシュルシュルルルッ!!
「きゃあああ────っ!!」
ピンクローザは口から糸を出し、アイリッサの両足首をぐるぐる巻きしたっ!
「しまったっ! おらぁあっ!!」
ネル・フィードはその糸を断ち切ろうと蹴りを放った!
ビイィイーンッ!
「き、切れないっ!?」
「きゃはははっ!! この糸はその辺の蜘蛛の糸とはわけが違うのよっ! 悪魔のダークソウルを纏わせた強靭な悪魔の糸よっ!!」
「ダ、ダークソウルっ!?」
シュルウウウンッ!!
グワンッ!!
「きゃああ─────ッ!!」
ドサァッ!!
アイリッサは悪魔の糸で引っ張られ、ピンクローザの足元へ引き寄せられた!
「アイリッサさんになにをするつもりですかっ!?」
『もちろん、私の糧となってもらう』
「糧だとっ!?」
『私の悪魔の糸で作った繭に閉じ込めて、熟成させてからゆっくりいただくわ。知ってる? 今はなんでも熟成させるのが流行りなのよ』
「そうですか。ですがアイリッサさんにこれ以上なにかすれば、あなたもただでは済まないっ!」
(こうなればブラックホールで異次元に封じ込めてやるっ!!)
ズオッ! ギュガガガガッ!!
ネル・フィードの右手に
『なにそれ? あなたも悪魔の力を? そんなはずないわよねぇ?』
「私はエクソシストですっ!! はあッ─────!!」
ズギュアアアアァァァッ!!
ネル・フィードはブラックホールをピンクローザに向けて放ったっ!
ズゴゴゴゴォォオ─────ッ!!
「さあっ!! 助かりたければ降参してくださいっ!!」
(マレッドさんの妹だ。なんとか救う手立てはないのかっ!?)
ブラックホールの渦がピンクローザを包み込むッ!!
ズオオオオオオッ───!!
『なにこれ? 痛くも痒くもないわ』
「な、なにっ!? 効かないっ!?」
バヒュンッ!!
ピンクローザは顔色ひとつ変えることなく、ブラックホールの渦を受け止め、かき消してしまった。
「あ、ありえないっ!」
切り札とも言えるブラックホールの能力がまるで通じない。ネル・フィードは面食らった。
『私の悪魔の力は闇の力。貴方が扱う力もなぜか闇の力に近いもののように感じるけれど、悪魔でもないのに不思議ね。あなたは何者なのかしら?』
「エクソシストと言ったはずです」
(悪魔の力、腐神なんかよりも遥かに厄介じゃないか!)
ネル・フィードのダークマターの攻撃は悪魔の能力者には通用しないのか? アイリッサの運命は? このまま熟成スイーツになってしまうのかっ!?
「あわわわ……」
(ネルさ〜ん! 負けないで〜! 私まだ死にたくないよぉ〜! ふえ〜ん!)
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