第228話 絶対に違うやん
マレッドの妹、ピンクローザの普段とは異なる行動と謎の
「ありがとござっしたー!」
ラーメンを食べ終えた3人は、金龍を出た。本当ならこの後、ジェラートを食べに行く予定だったのだが、ネル・フィードはピンクローザの繭が見たいと言い、マレッドの家に行くことを強く望んだ。
「本当に来てくれるの? 本当に悪魔かも知れないんだよ。繭の中からなにが出てくるのかも分からない」
「問題ありませんよ。私は神不要論者です。もちろんその対象は悪魔にも向けられます。悪魔崇拝なんてものもあるらしいですからね。悪魔について私はマレッドさんよりも知識がない。是非ご教授願いたい」
「そうか。君のような変わり者が、今はとてつもなく心強く感じるよ」
「そう言ってもらえたら光栄ですよ」
(ミューバの悪魔という存在。きっちりと把握する必要がある!)
「わ、私も行こっかな〜」
本当はそんな不気味な物を見に行きたくはなかったアイリッサだが、マレッドとネル・フィードをふたりきりにはしたくなかった。
そんな彼女の気持ちを知ることもなく、ネル・フィードは財布を取り出すと、にこやかに小銭をアイリッサに差し出した。
「アイリッサさんはジェラート食べて帰ってもいいですよ。はい。300ルーロで足りますか?」
ムカッ!!
「もう! いいんです! 私も繭が見たいんです! ひとりで食べてもしょーがないんですー!!」
アイリッサの剣幕を見て、ネル・フィードの顔付きが真剣なものに変わった。
「アイリッサさん、君がそんなに悪魔に興味があるなんて……」
「え?」
「意外です。アイリッサさんは怖くて行きたくないって言うと思ってましたから。じゃあ一緒に行きましょう!」
ネル・フィードはアイリッサが自分の興味のあることに興味を持ってくれたことがなんだか嬉しかった。
「あはは〜。はい、行きますとも。ええ、行きますよ……」
「アイリッサ……」
(なーんだ。やっぱり好きなんじゃないか。私とふたりきりにしたくないってとこか。やれやれ)
「では、出発しましょう。マレッドさんのご自宅に!」
(悪魔、もし暴れようものなら、ブラックホールで封じ込める!)
「私の家はバスで30分程のところにある。では行こうか」
3人がバス停に向かおうとした、その時だった。
「おい。そこのヒョロい兄ちゃん。なに昼間っからいい女ふたりも連れてんだよ。ひとり分けてくれや。あっ、やっぱりふたりとも頂こうかな♡」
ネル・フィードに因縁をふっかけてきた身長190センチ越えのガタイのいい大男。その後ろには、子分的な男がふたりいた。
「すみません。今から3人で行くところがあるんです。勘弁して下さい」
(頼むからどっかに消えてくれ。お前らザコを相手にしてる暇はないんだよ)
バキャンッ!!
男は有無を言わさず、ネル・フィードの顔面を殴りつけた。
「きゃあ! ネルさん!!」
「大丈夫か、ネル君! け、警察を呼ばなくては!」
「た、逮捕! 絶対に逮捕ですよ!」
ピクッ
「警察は呼ばないで下さい」
お尋ね者のネル・フィード。警察の
ドガッ! バキッ! ズドォッ!
大男の攻撃をただひたすらに受けていたネル・フィードだったが、さすがに飽きてきていた。反撃に転じることにした。
「はあ……しかたがないなぁ」
「痛い目にあいたくなければ、2度と女とイチャつくんじゃねーぞ! 分かったかあ!!」
そう言いながら殴りかかってきた男の拳を、ネル・フィードは素早く片手で受け止めた。
バシッ!
「なっ!? 離せ! くそがあ!」
「ダークマター……」
ネル・フィードの拳を掴む手から、暗黒物質が大男に流れ込む。
ブウウウウンッ!!
「おぎゃあああああっ!!」
プシュウウウゥッ!!
…………ドサッ!!
大男は体から煙を出しながら、地面に崩れ落ちた。それを見た子分ふたりはビビって走り去った。
「うわぁー!!」
「なんだあれっ? やべぇー!」
ネル・フィードはなにごともなかったように振り向くと、アイリッサとマレッドに言った。
「ご、護身用の使い捨てスタンガンが役に立ちましたよ。あはは……」
「び、びっくりしたじゃないか!」
「な、なーんだ。スタンガンなんて持ってたんですねー。ネルさんてば用意周到。あはは……」
『絶対に違うやんっ!!』
ふたりともそう思ったが、敢えて口にはしなかった。
その様子を物陰から伺う、目つきの悪い男がひとり。
「な、なんだ今のは? あの野郎、変な術でも身につけてんのか? 次こそは病院送りにしてやるっ!!」
やはり社長の息子、アイリッサに惚れているハイドライドの企みだった。
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