第224話 マレッドさん
メルデス神父への確固たる不信感を抱きつつ、ネル・フィードはアイリッサとランチを食べにいくことに。
「最近できたラーメンのお店に行きたいんですよ!」
「ラーメン? なんですかそれは?」
「やっぱりネル・フィードさんは流行りに疎いですね。ソーセージばかり食べてるからですよ!」
「いいじゃないですか。おいしいんだから……」
「ラーメンっていうのは小麦で作った麺を鶏ガラや魚介をベースにしたスープで食べるんです。極東の小さな国で独自の進化をして、今や世界中で人気なんです!」
「私はパスタで十分かな」
「んもう! 新しいものにもっと興味を持って下さいよ。老け込んじゃいますよ。かっこいいのに……」
「? かっこいい?」
「あーもう、なんでもありません! さっさと行きますよ。行列になってるかも知れませんから」
「ぎょ、行列? めんどくさいな」
「ネルさんって本当に自分の興味のないことはめんどくさがるんだから。もしくは寝る!」
「誰だってそうじゃないですか? 君もクラシックや哲学には興味がないでしょ? そして寝るはず」
「はいはい。そうですねー!」
(私に興味がないって言ってんの! 好きな人となら行列だって楽しいのに。ネルさんのバカ!)
ネル・フィードにやんわりと乙女心を傷つけられたアイリッサ。するとそこへ駆け寄ってくる人物がいた。
「おーい! アイリッサ!」
「あっ、マレッドさんだ!」
このマレッドという女はネル・フィードの上司にあたる人間。いわゆる『できる女』である。今日も仕事が休みのはずなのにパンツスーツでビシッと決めている。
長い黒髪をキュッと後ろで縛り、銀縁の眼鏡の奥の青い瞳は、ギロリとネル・フィードを見つめていた。
「アイリッサ、ネル君と付き合ってたのか。意外にも程があるわね」
「違います。ただ礼拝に行ったことがないと言うので案内しただけです」
機嫌の悪いアイリッサは即答した。
「礼拝に行ったことがない? 変わった人だとは思っていたけど」
マレッドは仕事はできるが少しデリカシーに欠ける人間で、社内でも好き嫌いは分かれていた。
ちなみにアイリッサもネル・フィードも彼女のことは嫌いではない。
「ほら、変わった人とか言われてますよ。ネルさん」
「え? 『変わった人』は自分にとっては褒め言葉ですよ」
「あははっ、ネル君って最近少し変わったよね? ちゃんと喋るし!」
「はい。喋ります」
「マレッドさんも礼拝に来てたんですね。私たちこれからラーメン食べに行くんですよ。一緒に行きません?」
「ラーメン? 確かその辺に最近できた店だよね?
「じゃあ、行きましょ。ジェラートもネル・フィードさんが奢ってくれますから!」
「そーなの? じゃあ行く行く!」
「な、なぜマレッドさんの分まで……」
こうして、マレッドを加えた3人でラーメンを食べに行くことになった。
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