第215話 快楽の代償

 アイドル『満開のSAKURA』のリーダー・天使イバラ。


 担当カラーである禁断の果実色の衣装を身に纏い、キュートな笑顔と抜群のダンススキルでファンを魅了する。黒宮藤花ももれなく、そのファンの1人だった。


 そう、ただのファンだった……。


 それがこの数日の間に、ブラック・ナイチンゲールとして共に行動する戦友となり、距離はみるみるうちに縮まった。


 イバラの可愛さ、かっこよさ、強さ、弱さ……それらを身近で感じながら、そのアイドルへの想いは、日に日に増していった。


 憧れが身近に存在するという非日常は、藤花の何かを壊すのに十分過ぎる程の麻薬的刺激だったのかも知れない。


「イバラちゃん……」


 『ごめんね』


 藤花はそう言いかけたがやめた。先程の行為が謝る事により醜く、汚らわしいモノになってしまう気がしたからだ。


 憧れの天使イバラを愛撫する事は、聖なる儀式。欲望を叶えた藤花はそう、自分に言い聞かせる事にした。


 そして、興奮がおさまってきた藤花はある事に気づいた。


 ナナのいびきが聞こえない。


「ナッ、ナナさんっ!?」


 藤花は慌ててナナの方を見たッ!



 ズルズルッ! ズルルルルル……



「な、なん……で……なんでナナさんに腐神が……っ!?」


 藤花の目の前で、腐神がナナの口から体内へ入っていったッ!そう……既に亜堕無と威無の2体がであるっ!


「そ、そ、そんなっ! 嘘っ!? は、早くブラックホールで吸い出さないとッ!!」


 シュボォォオオオウッ!!


 藤花は慌てて命の炎を右腕に集中した……いや、集中などできていなかった。自分の失態、愚かさ、罪の大きさに心がかき乱されていた。


「なんでっ!? 早くっ!! ブラックホール出てきてよッ!!」


 焦れば焦るほど、命の炎は弱々しくなるばかり。ナナの思いを完全に裏切る形となってしまった。


 人間とは純粋に愚かな生き物。


 


 すうっ……



 両腕のないナナが……糸で吊られた人形の様に直立した。勿論、意識はない。


「そ、そんなバカな事っ……!!」


 


 ビッ、ビリビリッ!


 ズバッ! ズバ──ンッ!!



 ナナの体が肥大し、ブラックスーツが弾け飛んだっ!



『うぅっ……うがぁ、うがあっ!』



 そして、うめき声を上げながら上昇していく。



「ナ……ナナさ……ん」


 藤花の命の炎は完全に消えていた。なす術なく、上昇していく醜く膨らんだナナを見上げる事しかできなかった。












 ドックン……













 ドックンッ!












 ドックンッ!












 ドックンッ!!














 ズドォオオオ────ンッ!!

















 スゥ─────…… スタッ!













 亜堕無と威無。カテゴリー2、アンティキティラの肉体との契約に成功。史上最強の腐神が地上に降り立った。





 その名は『ダリアナ』

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