第204話 亜堕無の変化

『があああああ─────ッ!!』


 ズビビィッ! パシュンッ!!


 亜堕無の体を金色こんじきの光が包む。その姿は神々しく、まさに神とも呼べる雰囲気へと変貌した。


『先に聞く。お前らはなぜミューバに来るに至った? 話せ』


 多岐に渡るアンティキティラの戦士としての任務。その中でもあまりに特殊な今回の事例。ハイメイザーの腐神化の原因の究明。それがアンティキティラとしての最後の仕事だと、ナナは思っていた。


『それを聞いてなんになる? 貴様らには関係ないんだよ』


 やはり、亜堕無は頑なにその理由を語ろうとはしない。それでも尚、ナナは問う。


『お前らが住む『エデル』は究極の楽園だと聞いている。なにが不満なのだ? 余程のことがない限り、ミューバに堕ちてくる理由がなかろう?』


『エデルが楽園? 誰がそんなことを決めたんだ? 楽園は僕と威無とで作る。その邪魔はさせない』


 亜堕無の意志の強さを感じたナナは、力づくで聞き出す方向へとシフトチェンジする。


『やれやれ。では拷問を始めるぞ』


 ボボォンッ!! ゴオウッ!!


 ナナは白銀色しろがねいろのXを全身に纏い、それを両手に武器化!


 ジャキイッ!! ゴオウッ!!


 白銀のXは4本の鉤爪かぎづめへと変形。


『最も殺傷能力の高い白銀しろがねのXだ。これでジワリジワリと痛めつけてやる。拷問は私の得意分野なんでな。覚悟しろよ』


 ナナの灼眼は不気味な光に満ちていた。肉食獣が捕食対象に向ける『あの目』……それに近い。


 ボンボンボンボンボンッ!!


 亜堕無が先制攻撃を仕掛けるッ!


一撃精爆光射ワンチャン・イジャキュレーションッ!!』


 ズビィッ────ッ!!


『そんなもの効くかぁ───ッ!!』


 ズガッ!! バチィッ───ッ!!


 ナナはXの鉤爪を亜堕無の放った光線に突き刺すと、そのまま弾き飛ばした!


 ドォォォオ───ンッ!!


 一撃精爆光射ワンチャン・イジャキュレーションは弾かれ、富士山の五合目あたりに着弾した!


『がぁああああ───ッ!!』


 亜堕無は攻撃の手を緩めないッ!


 ズキュンッ!!


 光速でナナの背後に回り込むッ!


『おっ!?』


 それはナナも驚くほどの動きだった!


『喰らえッ! 神聖尻鞭打ヘヴンリー・スパンキングッ!!』


 バチバチバチバチバチバチィッ!


 ナナのお尻に亜堕無の聖なる連続平手打ちが炸裂ッ!!


『んはあぁっ♡』

(こ、これはさっきのラブルームとやらと似たような効果なのだッ!)


 ドガンッ!!


 ナナは慌てて亜堕無の顔面に蹴りをぶち込んだッ!!


『バ、バカな! 僕の神聖尻鞭打ヘヴンリー・スパンキングを受けて正気を保つだとぉ!? しかも反撃まで……!』


『危なかったのだッ! また変になるところだった!』


『全く驚くよ。愛光魅室ラブルームも破られ、神聖尻鞭打ヘヴンリー・スパンキングまで。だけど君は本来、相当エロいはずだ。僕には分かる』


『肉体を持つ生命体なら当然備わっている本能だ。致し方あるまい。だが、性欲はコントロールできている方だと自覚している!』


『性欲のコントロール?』


 ナナのその言葉を聞いた瞬間、亜堕無の表情から、なぜか刺々とげとげしい殺気が消えた。

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