第199話 シンボルエンカウント

『いってくるッ!』


 ズバギュンッ!!


 麗亜のお守りを身につけ、ナナは東に向かってくる亜堕無と威無に向かい、西へ向かって飛んでいった。


 その頃、黒宮藤花も自宅でハイメイザーの日本襲来を知り、真珠に連絡を取っていた。ナナが戦いへ赴いたことを知ると、藤花もブラック・セラフィムを身に纏い、ゆっくりと西に向かい飛び立った。


 ナナとハイメイザーの戦闘中に自分がいては足手まといになるのは明らか。それを考慮した速度を藤花は保ち飛行していた。


「ナナさんあっさりハイメイザー殺しちゃわないかなぁ? 一応イバラちゃんのことは伝えたけど、返事が『心配ないっさぁ〜!』って、大西ライオンだったし。それが非常に心配……」



 ギュンッ!













『さあっ! 見えてきたよ! 威無♡ あれがマウント富士だ!』


『うん。あれ? あれれ?』


 キュンッ!


  キュンッ!


 2人は富士山の目前、青木ヶ原樹海上空に到着した。しかし、威無の機嫌はその前からだいぶ悪かった。


『やっぱりないわ。雪の帽子』


『そ、そうだね。やっ、やっぱり暑いからかな?』


 現在7月中旬。猛暑続きだった日本列島。富士山頂の雪は完全に溶けて無くなってしまっていた。


『全くもって期待していた楽しみがなくなった時のこの虚無感は、簡単に確実に怒りに変わるわね』


『威無、すこーしだけ落ち着こうか。ねっ♡』


『うるっさいっ!!』


 バギャンッ!


『痛いよ。威無……』


 威無の怒りのハイキックが亜堕無の顔面に炸裂。威無の怒りはおさまらない。


『そうだわ。アンティキティラの力よ。私のアイスショーでなんとか帽子を被せられないかしら?』


『威無、マウント富士は大きいよ。あの天辺に雪となるとなかなか大変だよ。諦めよう。また冬になれば見られるはずだから。ねっ♡』


『全くもって、怒りがおさまないわ』


『威無、ちょっと待っ……』


『待たないわ』


 ドガッ! バギッ! ズドッ!


 ガンッ! ズギャンッ! バコッ!



 威無は亜堕無を殴る蹴る!


 ボコボコにした。



『威無♡ どうだい? 少しは気が済んだかい?』


『多少はね。でも、もうマウント富士いらないわ……』


『えっ?』


『ぶっ壊しちゃって♡』


『えっ?』


『マウント富士をぶっ壊すのよ。亜堕無。やれるでしょ?』


『マウント富士をぶっ壊す? あははは。さすがにそれは……』


『やれよ。さっさと』


『わ、分かったよ! 威無♡』







 亜堕無は富士山の真上に移動。そして、火口に向け最大パワーのエネルギー弾を放つことにした。


『とりあえずマウント富士は活火山だ。刺激を与えれば噴火してくれるはず! 山ごと消し飛べッ!』



 ボンボンボンボンボンッ! 


 ボンッ! ボボォンッ!!


 亜堕無の右手に、ピラミッドを破壊した時よりも更に強い光が集まるッ!


『喰らえ! 一夜猛烈精射撃ワンナイト・イジャキュレーションッ!』















 ズッドォオオオ─────ンッ!!













 ズゴゴゴゴォォオォォオ……!









 亜堕無の放った光の矢は、富士山の火口に吸い込まれていった。




『とりあえず、やることはやった。直に噴火してぶっ壊れるだろう……』


 一仕事を終え、亜堕無は威無のもとへと戻って行く。すると、威無が殺気に満ちた視線をなにかに向けていた。


『威無、どうしたん……』


『あれよ。あの黒い格好。私の器になった子もあの格好してたわ』


『あー! いたね。あの黒い服の女が何人か』


『あの場にはあんなのはいなかった。新手あらてね。しかも、相当にお強そうよ。うふふ♡』










 威無の視線の先。そこにいたのはアンティキティラのブラック・セラフィムを身に纏い、アリスブルーの髪をなびかせる灼眼しゃくがんの女戦士。


 その灼眼、眼光炯々がんこうけいけい


 ナナ・ティームース見参ッ!



『さあっ、お前らのくだらんミューバ観光もここが終点だ。あっさりと殺処分してやるのだ。覚悟しておけよ』


 ハイメイザーとナナによる、世界存亡を懸けた戦いが、静かに始まろうとしていた。

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