第197話 よだれが止まらない
『トウカッ!』
「は、はい!」
『正直、余命の短いお前に、不安になるようなことを言わなくてもよかったのかも知れないと思っている』
「いや、でも……」
『それを敢えてトウカに伝えたのは、私がハイメイザーに万が一やられた時、お前に戦ってもらう為なのだ』
「ナナさんがやられるなんて、ありえないですよ〜」
『力だけなら負けない自信はある。だがな、腐ってもハイメイザーだ。どんな特殊能力を秘めているか分からん』
「そ、そうか……ですね」
『私がやられたら、その力を爆発させてもらいたい。できるか?』
「ナナさんが万が一やられるようなことがあれば、紫のX、我を忘れて全開放すると思います!」
『そうか。その時は頼む!』
「はい!」
藤花は思った。アンティキティラ、ナナ・ティームース。この人は戦いに関して、決して適当なことを言ったりやったりはしない。『最悪』もちゃんと想定しているスペシャリストだと。
ふたりは地上に降りた。
ガチンッ!
ガタガタガタガタガタガタッ!
ギリギリギリギリギリギリギリッ!
ボボオオオオオウゥッ!!!!
「あはは。わ、私もこれでとりあえず10倍ね♡」
西岡真珠のX量 859,000X YZ
藤花が『特殊な存在』だということを、ナナは誰にも言わなかった。藤花も真珠も余命はあと数ヶ月。自分がハイメイザーを倒し、ふたりには穏やかに暮らして欲しいと思ったのだ。
力を爆発させた紫のXから、邪悪なものを感じなかったことも、ひとまずナナを安心させたのだった。
『よし。ではシンジュ、麻婆豆腐というやつを頼むのだ!』
「ちょ! ハイメイザーを倒しにいかないの?」
『もっとうまいものを食べないと戦う気にならんのだ!』
「ナナさん、できるだけ早く倒してくれないと、世界遺産が壊されまくってしまいます!」
『まあ、それもフリーダムなのだ。とりあえず、うまい物を出す店は壊されてはいないのだろう? それに……』
「それに? なんですか?」
『腐神ハイメイザー、そんなにめちゃくちゃ破壊行為を繰り返しているのか? 被害状況を教えてみろ』
藤花は今まで報じられたハイメイザーによるものと思われる被害状況をナナに伝えた。
「えーっと、エジプトのピラミッド全壊。スペインのサグラダファミリア半壊。イタリアのピサの斜塔全壊。ペルーのナスカの地上絵、マチュピチュ遺跡全壊です」
『3日でそのペースか。やはり選んで壊してるようだな』
「えっ?」
『腐神ハイメイザーの力をもってすれば、3日でかなりの広範囲を破壊し尽くせるだろう。なのにその程度の被害だ。気に入らない物だけを標的にしているということだ』
「気に入らない物だけ?」
(そっか、教祖様が言ってた。ふたりは地球を自分たちだけの楽園にするつもりだって。だから、気に入ったものは残すってことなんだ)
「ナナ、それでもこれ以上被害を出さない為にも……!」
『麻婆豆腐なのだッ!』
ジュルルル
真珠の必死の願いも、ナナにはまるで届かず。よだれを垂らすのみ。ドスグロが呆れた顔で真珠をなだめる。
『シンジュ、この女はこうなったら言うことなんて聞きはしない。とりあえずお腹を満たしてあげるのが得策だお。まったく下品な女だお』
「ほんと、困った救世主だわ……」
真珠はドスグロの言う通り、キッチンに向かい麻婆豆腐を作ることにした。
その頃
とある都市のオフィスビル最上階。
元・ゼロワールド本拠地。
『お前は誰だっ!? いつの間に入り込みやがった! ゲロッ!!』
『ずっと待ってたのさぁ、
『消え失せろッ! 牙……百合島さんに近づくなッ! ゲロッ!』
ズドォ────ンッ!!!!
『ウッゲッロオオオォォォ……!』
(こ、こいつッ! ま、まさかぁっ!?)
ドサッ!!
ぶしゅううううううううっ……!
『消えな。お前はキモくて食う気もしねぇよ。さて……』
ガバッ!!
『ご馳走は最高の状態で食べないとねぇ。連れて帰って準備をするか。ガッヒャヒャヒャヒャアッ!!』
ガッシャ────ンッ!!
ズバギュンッ!!
フロッグマンが殺された。そして、残酷神100%の力を手にしながらも、意識を失くした百合島杏子は何者かに連れ去られてしまったっ!
そして、ついにハイメイザーの2人が日本にやって来るっ!!
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