第196話 特殊な存在

「ナナさんっ! 私の力は?」


 藤花はナナの強さに驚愕しながらも、自身の力の変化が気になって仕方なかった。


『さすがに0ではない。スピード、パワー、見た感じと受けた感じ、十分100万XYZは超えている。なんだったんだ、さっきの0は?』


「本当ですかっ!?」

(よかった。今の私ならハイメイザーの戦いに連れてってもらえるかな?)


『トウカ、じゃあ次は空中戦と洒落込もうか? 飛べるな?』


「は、はい!」



 バギュン!


  シュンッ!


 2人は上空へと移動。


「藤花、がんばって!」


「ナナさん、かっこいいっ♡」


『僕とマサオのガリメタが不良品な訳がないよ。ねっ? マサオ♡』


「はい。そ、そうですね」

(綺麗な男性に好かれると言うのも意外と悪くないものですね。って、いやいやいやいや、私はなにをっ!)







 ヒュ─────ウウウッ!




 上空50メートル。ナナは腕組みをして藤花に話しかけた。



『トウカッ!』


「は、はいっ!」


『Xを右手に集中、爆発させろッ!』


「それが本当に怖いんですよ。腕が消えちゃいそうで……」


『やるのだ。私がやめろと言うまで放出し続けろッ!』


 ナナこの人は私の意見なんて聞く気はない。紫のXの正体が知りたくて仕方がないんだ。藤花は観念した。


「分かりました。いざという時は助けて下さいねっ!!」


『分かったのだ』


「では、いきますっ!!」


 グッ!


 藤花は右手に力を込めたっ!


「はあああああ────ッ!!」


 

 シュボォォオオオオッ!!


 ズドォォォオオオオンッ!!



 右手の命の炎がみるみる大きくなっていく! それと同時に襲う腕の重みと喪失感!


「ぐぐっ! き、きたっ!」



 ズオオオオオオッ!!



『確かになにかがおかしいな』


 ナナも藤花の紫の命の炎の変化を瞬時に感じ取った。


「ナナさんっ! まだですかっ!? もうこれ以上は……っ!」


『分かった。やめていいぞ』



 シュウウウウウッ! ボボォンッ!


「はあっ! はあっ! はあっ!」


『紫のX。なるほどな……』


「なにか分かりましたか?」


『まあ待て。その前に話しておくこともある』


 ナナは西岡家の庭で自分たちを見上げる4人の姿を見てから話し出した。


『そもそも空中に来たのは、今からする話を他の奴らに聞かれない為なのだ』


「そ、そうなんですかっ? 一体なんの話が?』


『私はお前の力の正体が分かった気がする……』


「私の力の正体?」


 ナナの真剣な表情と口調、それが冗談ではないことを物語る。藤花の力、紫の命の炎とはなんなのか?


『まず、トウカの紫X。それの『本当の力』を知ることはまずないだろう』


「えっ!?」


『見た感じ、理性を保ったままでそのXを全開にすることは不可能だ』


「そ、そんな気もします」


『無理もない。紫X、それからはアンティキティラとは『異なる力』を感じたのだ』


「アンティキティラと異なる!?」


『本来トウカが得るはずだったXは、既存のものだった。それがなぜ紫などというアンティキティラには存在しないXが現れたのか。それが謎だった』


「は、はい」


『さっき地上でトウカの攻撃を受けながら私は感じ取ったのだ』


「な、なにをでしょうか?」















『お前の中にはなにかいるぞ』











「えええっ!?」


『私も驚いた。カテゴリー2、そのあたりの力を感じたのだ』


「そんな! 私の中に腐神みたいのがいるってことですかっ!?」


『なにかいるとは言ったが、腐神とは違うな。タマシイ? ミューバにはそんな概念があるはずだ。知っているか?』


「分かります! 私の魂がハイカテゴリーってことですか? 体はカテゴリー8なのに?」


『そういうことになる。トウカ、お前はかなり『特殊な存在』だと私は認識した。ある意味、ハイメイザーの腐神よりも稀有けうな存在なのかも知れない』


「私が、稀有?」


『さっきのXの数値0。これもお前の意識外で、そのタマシイが勝手に操作していた可能性が高い』


「な、なんのためにでしょうか?」


『『私に関わるな』そう言っているようにすら感じるのだ。まさにミステリーなのだ……!』


 ナナが少しビビるほどの藤花のカテゴリー2の魂の力。その正体とは一体なんなのだろうか?


「あのー、ナナさん。私は前世がカテゴリー2の人間だったってことでいいんでしょうか?」


『ハッキリは分からんのだが、多分そうなるのだろう。本来はありえんのだろうがな。よく今までなにも感じずに生きてこられな』


「17年間生きてきて、なんにも分からなかったです……」


『そのタマシイ、トウカのアンティキティラの力に反応して目覚めたのだろう。いずれせよ、そいつは動き出していたのかも知れんがな。ルネッサーンスなのだ』


「な、なんか怖いですぅ」








 藤花は自分が自分でなくなるのではないかとかなり不安だった。


「私の名前は黒宮藤花、17歳、身長168㎝、バスト88、ウエスト60、ヒップ89、好きな食べ物はカニあんかけ炒飯、好きなアイドルは満開のSAKURAの天使イバラ……」


 数時間おきに、自分が自分であることの確認作業をしてしまう藤花だった。

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