第195話 藤花 VS ナナ

「私のX、ゼロなんですかー?」


『そうだ。ほら見てみろ!』


 藤花はナナのX測定装置を見た。


「本当だ。0になってる」


『ちょっとぉ!!』


 ドスグロが苛つきながらナナに詰め寄る。ナナの手首を掴んでX測定装置の数値を確認した。


『そ、そんなはずはないッ!』


 その場の全員が藤花の燃え上がる命の炎を見た。その不気味さと美しさを兼ね備えた炎には、禍々まがまがしい力が宿っている様に見えたのである。


『私もこの数字が正しいとは思わない。と言うわけで表へ出ろ。トウカ』


「えっ?」


『トウカの実力。私が戦いながら見極めてやる』


 『アンティキティラ最強』


 それは実質、宇宙最強にも等しい。そんな存在と一戦交える。手加減してくれるのは分かっていても、藤花は怖かった。やはりさっきの『0』が不安をあおっていた。


「分かりましたけど、気をつけて下さいね。間違えても命だけは……」


『くっ、あははっ! 私がそんな加減も出来ない無能に見えるか?』


「あははっ! で、ですよね〜」


 ふたりは西岡家の広い庭に出た。


 真珠、麗亜、ドスグロ、正男。皆このふたりの力のぶつかり合いに興味があった。藤花はどこまで強くなったのか? 本当に命の炎の力はなくなってしまったのか? そして、ナナの戦いぶりとは如何なるものなのか?


『私はXを使わない。だから安心しろ。トウカはなにをしても構わない。その紫Xの本質を見せてみろ!』


 バッ!


 ナナはアンティキティラ特有の戦闘スタイルで構える。陣平の体術をマスターしている藤花の目は、ナナのその構えを見て一瞬で悟った。


 『レベルが違う』


 本来ならば、まず攻撃など仕掛けはしない。自分の『死のビジョン』がハッキリと見えるからだ。


 まさにゴムロープのないバンジージャンプ。自殺行為そのもの。でも、飛ばなくてはならない。今はそういう時間なのだ。


「で、ではいきますッ!!」


 ズアッボボォンッ!!


『来てみろ。紫X!』


 藤花は勢いよくナナに殴りかかっていった!!


『陣平流! ヤマカガシッ!」


 ズバッ! ズバッ!! ドンッ!!


『ははっ! いい身のこなしだ!』

 

 パシッ! パシンッ!

  

 ナナは藤花の拳を払い除ける。


『からの天翔朱雀ッ!!』


 ブンッ! ブンッ! ブアオッウッ!!


『おおっ! 鋭い蹴りだッ!』


 サッ!! サッ! サッ!!


 蹴りを放ちながら藤花は、先が読まれているのをはっきりと感じた。


「てやあっ!! 青龍だあっ!!」


『来いッ! ふんっ!!』


 ドンドンドンドンドンドンッ!!







「はあっ! はぁっ! はあっ!」


 ナナは藤花の青龍をかわすことなく全て腹で受け止めた。


『トウカの戦闘スタイル、実に素晴らしいぞ。ジンペイリュウ? すごいなっ!』


「そ、それはどうも……っ!」

(な、なんてかわいい化け物っ!)

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