第194話 困惑のナナ

 ドスグロの気配に気づいたナナは、布団から飛び起きた。藤花と真珠は大丈夫と思いながら、一応心配する。


「あっ、起きたわね」


「大丈夫ですか? ナナさん」


『まだ目の前が白黒しているが、問題はない』


 そう言ながらナナは、正男の全身を舐め回す様にチェックした。


『この男がガリメタ要員なのだな? ドスグロ』


『うんっ! そうで〜す♡』


 正男はナナの赤い目を見つめた。


「私、風原正男と言います。考古学者をしています。あなた方に会えて、とても嬉しいです」


『マサオか。私はアンティキティラ、ダブルX隊所属、隊長ナナ・ティームースだ。ちなみにお前は牛丼を作れるのか?』


「ナナ、牛丼はいいから。それよりもガリメタでしょ! まったく」


『仕方ないな。じゃあ、マサオ、右腕を見せてみろ』


「は、はい! あの、ちなみに牛丼は作れます。はい」


 正男は袖を捲り、腕全体に施された歯車のタトゥーを皆に見せた。その色は美しい『青』だった。


「素敵な青ですね」


「これが藤花の力を10倍に?」


『このガリメタを使えば、ナナのご希望通り、トウカのXは10倍になる。残酷神と同等の力を得ることになるお』


 スリスリッ♡


 ドスグロが正男の腕をさすりながら、頬を赤らめた。藤花は決意を語る。


「それでも私のXは112万にしかならない。ナナさんの690万に比べたらまるで力が足りない。でも、ハイメイザーとの戦いは私も同行したいです!」


 X量の数字を単純に並べてみても、自分とナナとでは天と地ほどに差がある。それでも、藤花はイバラを諦めることができなかった。


 そんな藤花の気持ちなどお構いなしに、ナナは話を前に進める。


『よし。ではそのガリメタでトウカのXを倍増させる。始めろ!』


 正男、藤花、共に頷き、初めて力を授かったあの日以来の緊張感の中、互いの右手を握りしめた。


「黒宮さんの力、10倍にっ!!」


 ギュウッ!!


 正男は思いを込めて藤花の手を強く握った!














 ガチンッ!


 

『ほう。ちゃんとガリメタが回り出すじゃないか。見事だ、ドスグロ!』


『えへへ♡ 伊達に開発部部長じゃないんだからね!』











 ギリギリギリギリギリギリッ!!

 ガタガタガタガタガタガタッ!!



「手が熱いッ!! 来るッ!」












 ギリギリギリギリッ!!


















 ズァッ!!















 シュゴオオオオオオッッ!!














 ボボォォォオオオオオンッッッ!!














 藤花を包む『紫の命の炎』は、謎めいた怪しさを放ちながら、その濃さを増し、揺れていた。


『トウカ、なにか感じるか?』


「初めて力を授かった時の様な高揚感は特に。体は若干熱いですが……」


『そうか。どれ』


 ナナはそう言いながら、Xの測定装置を操作し始めた。


 ピッ

 

 ドスグロは自信満々に髪をかきあげると、正男の右腕に腕を絡めた。


『ちゃんと10倍になってるでしょ? 僕とマサオのガリメタだもん♡ ね? マサオ♡』


「そうですね」


 そんなふたりをよそに、藤花のXの数値を見たナナは首を捻り、何度も測定を繰り返す。


『ナナ、どうなの? 早く教えて♡』


 ドスグロに急かされたナナは、困惑気味に手首の測定装置の数字をドスグロに見せた。





















『ほれ、よく見ろ。トウカのX量ゼロだ。ドスグロ、これはどういうことだ?』


 全員、意味が分からなかった。

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