第192話 なんて日だっ!!
1時間が過ぎ、ドスグロが上空から正男を抱えて降りて来た。正男は意識がないのかぐったりしていた。
「ナナッ! ドスグロさん戻って来たわよっ!」
『分かった。少し待て。勝てそうなのだッ! う〜んと……』
結局、麗亜の勝ち。
「ナナさん、またやろうね♡」
『オセロ……なんという恐ろしいゲームだ……』
「僕ね、将棋も強いんだっ! また教えてあげるっ♡」
『そ、そうか……頼む……あ、頭がクラクラと……』
バタッ!
立ち上がった途端、ナナはリビングで倒れた。
「ナ、ナナさーんっ!! お、お母さーんっ! ナナさんがっ……!」
「ちょっ、えー!? オセロでぶっ倒れるってッ! どんだけムキになってやってたのよっ!」
ナナと正男を布団に寝かせ、回復を待った。その正男の右腕にチラリと歯車のタトゥーが見えた。
「ドスグロさん、歯車の……じゃなくガリメタ、無事にできたんですね?」
『もちよっ! やっぱこの男……イカしてる♡』
「ね、ねぇ、ドスグロさん?」
『なに? 『シンジュ』さん……ぷぷっ!』
「はっ倒すわよ……!」
『ゴホッゴホッ! な、なあに?』
「ひょっとしてあなたも、ナナのようにアンティキティラに嫌気がさしてる側の人種なのかしら?」
真珠はナナとのやり取りを聞いていて、ドスグロも本当はアンティキティラを離れ、地球で暮らしたいのでは?と思ったのだった。
『あー、それね。僕はナナ程ではないかな? カテゴリー1になれるならなりたいと思ってるし』
「カテゴリー1とは、そんなに素晴らしいものなのですか?」
藤花はそれが非常に気になっていた。精神生命体……その魅力とは
『そうだね。肉体がない。労働がない。争いもない。……快楽もない訳ではない。素晴らしいとは思わないかい?』
「え? ま、まあ……なんとなく」
『そんなカテゴリー1にも、バグは発生してしまう。それが腐神。僕は腐神にはならない自信があるからね』
「そういえば腐神にならなくても、地球に来てるカテゴリー1っているんでしょ?」
『ああ。ミューバ発展にひと役買ってくれている神ってやつの事だね。キリストとか……』
「現在、世界は宗教で溢れかえっていますよ。カテゴリー8にしか神はいないって言われてから、本当に神なんて不必要なものだなって思うようになっちゃいました」
『へぇ……そういう人間が増えてくればカテゴリー7にすぐに上がれるはずだよ。だって実際にもうキリストやってたカテゴリー1はとっくに精神世界にお帰りになってるからね』
「やっぱりそうなんですね」
『不思議な力で、当時の無知な人間に崇拝感情というものを植え付け、ある意味『天罰』と言う名の恐怖で統制を促したんだよね』
「必要悪……だったんですよね」
『そうだね。健全な人間になる為にはやはり必要なイベントだったと言える。そして、次のステージに行くには……今度はその『神の呪縛』から解き放たれる事が必須……果たして何千年かかるかな? アンティキティラは首を長くして待ってるお』
「はぁ……私、この数日で価値観がフルボッコされて非常に疲れてしまいました……」
その時、正男が目を覚ました!
「あっ! アンティーっ! 起きた? 私よっ! 西岡ですっ!」
「あ……れ? なんで西岡さんが……えっ……私は自宅にいたはず……ここは?」
「私の家よっ!」
「い、いつの間に……あれ? 黒宮さんも?」
「お疲れ様です。風原さん。大丈夫ですか? もうお話できます?」
正男はゆっくりと体を起こした。そして、自分を潤んだ瞳で見つめる男と、隣で寝ている女に気づいた。
「こ、このお2人は?」
藤花は深呼吸してから、ゆっくりと正男に言った。
「この方たちは……アンティキティラです」
正男のボーッとしていた顔が、一気に正気に戻った。そして、考古学者としての好奇心に瞬く間に火がついた。そしてその思いは『ある一言』に集約されて正男の口から飛び出したっ!
「……なんて日だっ!!」
藤花と真珠は、普段真面目な正男が、『ことぅーげのギャグ』を知らずに口走った姿に笑いを堪えていた。
(ヤバいっ……! ウケるッ!)
(ぷぷー! アンティー! ここで言う? 『なんて日だ!』言うっ!? ウケを狙ってないのがさらにウケんだけどっ! ぷぷー!)
『バイきんぐ・小峠英二』
それは作者のお気に入り♡
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