第191話 ナナの実力

 ナナの好奇心により、藤花の命の炎の力は増幅される事となった。


『OK分かったよ。じゃあ また『あの彼』のとこに行って、それ用のガリメタを施してくるね♡』


 『あの彼』


 ドスグロのいう『彼』とは、もちろん風原正男の事である。


『ドスグロっ! 誰でもいいのだ。さっさとしろっ! 『シンジュ』でもいいだろ? お前の宇宙船に連れてってガリメタを付けろッ!』


「わ、私っ!? UFOに? ちょ、ちょっと怖いわ……」


 真珠がビビっていると、ドスグロの顔がみるみる赤くなってきた。びっくりして藤花が声をかける。


「ドスグロさん、どうし……」


『ナナっ! いくらなんでも、そのぉ、『おてぃんてぃん』にガリメタを付けるなんてさ、いくら僕でもそれは……』


「はっ!?」


 真珠は気づいた。さっきのナナのセリフ。


『シンジュでもいいだろ?』


『宇宙船に連れてってガリメタを付けろ』


 つまり『西岡』としか名前を聞いてなかったドスグロにはこう聞こえたのである。


 『ちんこにガリメタを付けろ』


『うふっ♡ でも それもありかもねっ♡』


「ありじゃなーいっ! シンジュは私の名前っ! もう、まじでアンティキティラ嫌いよ……」


「に、西岡さん、まさかっ? 『シンジュ』って、おてぃん……」


「藤花、おだまりっ!」










 ドスグロは絶対に『正男じゃなきゃ嫌だ』と言って聞かなかった。仕方なく、藤花、真珠、ナナはドスグロが正男を連れて来るのを待つ事にした。


『んじゃあ、サクッとアブダクトしてガリメタを挿入して、ここに連れてくるからっ♡』


 バギュンッ!


 ドスグロは飛び立っていった。


「風原さん、またアブダクトされるんですね。なんか申し訳ないです」


「しかも、アンティキティラの男にモテてるとは思わなかっただろうね。本当に歯車のタトゥー『以外の事』されてないか。それが心配だわ……」


「確かに風原さんかっこいいですし、ドスグロさんが好きになっちゃうのも分かりますけど。ねぇ……」


 2人の心配をよそに、ナナは冷蔵庫からチョコ最中ジャンボを持ってきて食べ始めた。


『うんまあい♡ もぎゅもぎゅっ』


 藤花はアイスでご満悦なナナに、いくつか質問してみる事にした。


「ナナさんってアンティキティラ最強なんですか?」


『まあな。ダブルXの隊長を務めていた。最強と言って差し支えないだろう』


「ダブルXって、どういう意味なんですか?」


『その名の通り、左右の手で異なったXを同時に扱えるという意味だ』


「左右同時に? 異なった?」


『そうだ。右で凍結、左で雷撃、的な事だ。私はその全てのXをトウカの様に武器化する事も可能だ』


「ええっ!? す、すっごい」


「あはは。本家最強はレベルが違うわね……」


 ナナのチート級の能力を知り、自分達がほんの僅かな力を分け与えられた存在に過ぎないと、改めて感じた2人だった。


「ナナさーん♡ 話が終わったんならオセロしようよー♡」


 ずっとナナと遊びたくてうずうずしていた麗亜がやって来た。


『オセロ? なんだそれは?』


 ナナはリビングへ行ってしまった。







「麗亜ってばナナにぞっこんなのよ」


「なに落ち込んでるんですか? 別にいいじゃないですかー」


「いいんだけどさ。なんか母としては複雑なのよ……」


「そういうものなんですね」









 



















『なんだこれはっ! 全部黒にされたぞっ!? 私は負けたのか?』


「ナナさん超弱い♡」


『そんな馬鹿なっ! 次は私が黒でやるのだッ!』


「色の問題じゃないと思うけどねー」


 ドスグロが戻ってくるまでの1時間。ナナは麗亜に1度も勝てなかった。


『レ、レイアっ、貴様の頭脳はどうなっているのだ? ひょっとしてお前もかなりの優秀な人材なのではっ?』


 ナナの『優秀』の判断基準に、料理に続きオセロが加わった。

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