第190話 どんだけ〜
一瞬たじろいだドスグロだったが、改めてまじまじと藤花の紫の命の炎を見た。
『いや、これは凄いよ……へえ、確かに紫だ……こんなXが存在するなんて……』
不思議そうに藤花の紫の命の炎を眺めるドスグロに、ナナがさらに情報を付け加えた。
『X量も特段すごいというわけでもないのだ。腐神とギリギリ渡り合える11万ちょっとだった。お前のガリメタの設定とやらはちゃんと調整できていたはずだぞ』
『そうだよねぇ? まぁ、今回は腐神最強の残酷神が降りてきてるから、さらに彼に『3つ目のガリメタ』を施す予定だったけど……ナナがアンティキティラを抜けて、ここで暮らすと言うのなら……もうそれも不要だね。まったく……』
『そうだ。私が全て殺処分する。トウカやシンジュでは
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってもらっていいですかっ!」
その話を聞いていた藤花が、あたふたしながらアンティキティラの2人に話しかけた。
その横で、真珠は藤花の言いたい事が分かって微笑んでいた。
『ん? なんだ? トウカ』
『どうかしたのぉ?』
「えっ、えーと……ドスグロさんっ! 1回目の歯車……じゃなくてガリメタは、私達にアンティキティラの力を与える為、そして2回目は死んだ仲間を生き返らせる為のものでしたよね?」
『そうそう。死人を蘇らせるガリメタは、私が長年かけて開発した自信作なの。無事に作動してよかったわ♡』
「さっき言ってた……3回目のガリメタとは、一体どんなものだったのですか? ナナさんがいなかったら、私達にどんな力を……ガリメタで授けようと?」
ドスグロは藤花のその質問に笑いながら答えた。
『えっ? まぁ単純に力を10倍にしちゃうやつ? いっとこうかなぁ〜って思ってたけどねっ!』
「力を10倍!? そんな事もできるんですか?」
『そうねぇ……今のあなたの力の10倍で、残酷神とギリギリの勝負ができるんじゃないかと思っていたから』
「い、今の10倍で? 残酷神と同等に?」
『たぶんね。アンティキティラのカテゴリー上げには、その『ギリギリ』ってのが重要でね。調整が非常に難しいんだお。力の強さ、人数……どちらも過ぎれば評価は低くなり、カテゴリー昇格には至らないからね』
「知ってます。宇宙の理。最小限の力で最大の成果を上げる事が、カテゴリー上げには重要だという事……」
『あら? よく知ってるのね。ナナから聞いた?』
「いえ、他の異星人の方に」
『他の異星人? 何者だ?』
ナナが怖い顔をして問いただしてきた。
「えっ?」
(は、話していいのかな……? 教祖様の事って……)
『ミューバには沢山の異星人が遊びで来ているが、中には逃亡中の犯罪者もいたりする。それだけこのゴミ星は雑多で異様なのだ。飯が美味いのが唯一の取柄だなッ!』
「あはは……」
(取柄があるだけ、まだいいか……)
『なんだい君……力を10倍にしたいとでも?』
「え? あっ……えとぉ〜」
『あははッ! 君、分かりやすいね』
腐神はナナが全て葬ると言っている。今更、自分が力を上げるのは無意味。当然断られると思っていたので、藤花ははっきり口に出来ずにいた。
『私の力を10倍にして欲しい』
その一言が、喉まで出かかっていた。『少しでも何かの役に立ちたい』『地球の未来は自分達の手で前に進めたい』藤花はそんな綺麗事を言うつもりはなかった。ただひとつだけ『なんとかならないか』と思っていた事があった。
『天使イバラの救出』
威無は天使イバラを器にして誕生した腐神。とはいえ、ほぼ強引にイバラの中へ入っていった。契約とは程遠かったあの光景。
『契約の不成立』
藤花はその一縷の望みに賭けたかった。ひょっとしたらもう、杏子の言う通り全てを威無に乗っ取られてしまっているかもしれない。でも、藤花はある事を思い出し、希望を捨てずにいたのだった。そう、あの時……
『腐神斬咲との戦いの
イバラの救いたかったアイドル『野苺めーぷる』は、『絶望の中』腐神化した様子だった。それにも関わらず、アイドル天使イバラの声に反応し、頭をかかえ、声を震わせていた。
「イバラちゃん……」
(あんなの契約じゃないっ! イバラちゃんは嫌がっていたっ! 助けてって言ってたっ! 腐神のクーリングオフ……無理なのかな……)
『気持ちは分かるけど、腐神はナナに任せて、君はおとなしく……』
ドスグロがそう言いかけた時だった。
『ドスグロ! トウカのXを出来るところまで引き上げろッ! 紫のXの謎を解明してみたい。好奇心だ』
『えっ? もおっ! どんだけ〜!』
果たして、藤花は無事に『更なる力』を授かる事ができるのか?
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