第188話 ドスグロ

 ナナ・ティームースが『謎』だと言う藤花の紫の命の炎。アンティキティラで忌み嫌われるというその色の炎には、どんな秘密が閉じ込められているのか?


『本当に武器化だけなのか?』


 ナナは尚も藤花に問いただす。


「あっ! そうだっ!」


『何かを思い出したか?』


「たぶん大した事ではないんでしょうけど。このみことの……」


『トウカ、Xと言え』


「はい。私の紫のXなんですけど、右手に集中して さらに全力で放出すると、腕が重たくなるんです。腕が消えてしまうような錯覚に陥ります」


『ふむ。それはなかなか興味深い。新たなXの可能性というわけか……』


「新たな可能性ですか?」


『ガリメタの開発部の奴らに言ったら驚くだろうな。しかし、もうアンティキティラなど関係はない。私はミューバで美味しい物を食べて、楽しく暮らすのだからなッ!』


「あはは。そうですね……」

(陣平さんも言ってた。『何か』がその炎には隠されているのかもしれんって。でも、それを知る事もないな。ナナさんがハイメイザーをやっつけてくれるわけだし……)



 その時ッ!









『ここにいたんだね、ナナッ!』




 突然、上空から男の声がしたっ!!


『ちっ! なんで貴様がここにっ! まぁ、察しはつくがなっ!』


 シュー、スタッ!


 その男、パンツスタイルのブラック・スーツの上に白衣を纏っている。医者か、研究者か、そんな印象を受ける。


『上層部からの指令でね。ナナの帰りが遅いから、地上にも降りられる『ガリメタ担当』の僕が探しにきたんだ。ハイメイザーのデータは取れたの?』


『これからだ。帰れっ!』


『ふっ、そうはいかないね』


 

 その男は腰に手を当て、ナナを睨みつけている。


「あの〜、ナナさん、この方は?」


「彼氏? 超イケメンじゃない♡」


『バカを言うなッ! コイツはアンティキティラのガリメタ開発部部長『ドスグロ・ヴァルフォード』今回、お前たちに力を授けた人間にガリメタを施したのがコイツだッ!』


「えーと、正男さんに歯車のタトゥーを施したのが、この人って事か」


「ふ〜ん。イケメンなのに『ドスグロ』って、なんかヤバそうね」


『こいつは『ある意味』ヤバいが、頭はアンティキティラで1番優れているのだ。『ドスグロ』もミューバ語に訳せば天才とかそういう意味だ』


「なんか私、アンティキティラ語があまり好きになれないわ……」

(何故にシンジュだけ『ちんこ』なのよッ!)


「どうしたんですか? 西岡さん」






『ナナ、僕は分かっていたよ。君がアンティキティラを抜け、ミューバで暮らそうと考えていた事……』


『だからなんだ? 私は自由に生きるッ! 腐神は片付けてやるッ! 勝手にお前らカテゴリー1になっとけっ!』


『ナナ……許さないっ!』


 ドスグロは怒りの表情だった。



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