第184話 不公平

 真珠は藤花に連絡を入れた。


『藤花に会わせたい人がいる』


 とりあえず、そんな感じで細かい内容は伝えなかった。真珠はサプライズやドッキリが好きなタイプだった。


 来たらいきなり、アンティキティラの戦士がいるなんて、かなり驚くはず。真珠は藤花の反応が楽しみだった。しかも、性格はなんだけど、かわいい女の子。『その辺』の藤花の反応も楽しみだった。


(私って、不謹慎かしら♡)



 1時間後、藤花はやって来た。


 ピンポーン!


「来たね、藤花。さて、このナナを見てなんて言うか」


『ふぎゃあぁぁあっ!! ぷぎぃぃいいっ!! ふがっ!!』


 大いびきのナナを見つつ、真珠は玄関へ。


 ガチャッ!


「いらっしゃい。藤花」


「こんにちは。西岡さん。会わせたい人って?」


「ふふっ。まぁ、あがってちょうだい」


「分かりました。お邪魔します」



 ブアオウッ! ブシュンッ!



 藤花は飛翔で来た為、着ていたブラック・スーツを一度脱ぎ、白のワンピース姿になり西岡家にお邪魔する事にした。


 真珠は藤花を連れてリビングへ。そこにはブラック・スーツを着た女が大いびきで寝ていた。


「こ、この人はっ? な、仲間?」


「あはは……話すよ」


 真珠はアンティキティラから来たナナ・ティームースについて出来る限りを話した。


「そ、そうだったんですか。大変でしたね。地球の食文化、X……へぇ」


「でもね、本当に偉そうというか、地球人を下に見てるから。美味しいごはんを作れる人だけを優秀とか言ってんのよ」


「最初に会ったのが私じゃなくてよかったです。私、料理なんて全然できないので」


「あら、そうなの? とにかくっ! 寿司とカレーとグラタンとラーメンで餌付けしといたからっ!」


「餌付け? あはは」


「でも可愛い顔してるでしょ?」

(藤花の好みじゃないのかしら?)


「ですね。これで4500歳とか、偉そうとか、信じられないですね。いびきは凄いですけどぉ」


「で、でしょー!」

(だ、ダメか! 麗亜のライバルにはできなかったか……)


 すると、ナナが目を覚ました。


『スッピィー! ふがっちょっ! おっと、よく寝たのだ……うーん!』


「わっ! 起きた」


「ナナ。もう1人のブラック・ナイチンゲール、黒宮藤花が来たわよ。何か話があるのよねっ?」


『ふむ。貴様がもうひとりのブラック・ナイチンか。クロミヤトウカ?』


「黒宮藤花です。よろしくお願いします」


『トウカと呼べばいいか?』


「はい。藤花と呼んでください」


『ふむ。覚えやすい名だな』


「そ、そうですか?」










「はっ!」

(わ、私の名前『シンジュ』は、アンティキティラでは『男性器』っ! ヤバいっ! と、藤花は一体ッ!?)
















『アンティキティラで『トウカ』は『太陽』を意味する。シンジュと同じく、とても覚えやすくて助かるな』


「太陽? そうなんだ。覚えやすくてよかったです。えっ? じゃあ、西岡さん『シンジュ』は一体なんだったんですかー?」



 藤花は何の悪気もなく笑顔で聞いた。




















「死んでも言わないわ……」





 『不公平』


 真珠はそう思った。

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