第183話 かわいい寝顔
亜堕無と威無は世界遺産を巡り、破壊行為を繰り返していた。時にはそれに巻き込まれる形で、人的被害も出ている有様だった。
そんな中、残酷神、百合島杏子はその力を100%にまで引き上げていたが、焦るあまり、その力に肉体が追いつかず、意識をなくしてしまっていた。
一方、ブラック・ナイチンゲールの黒宮藤花、西岡真珠は、はぐれに言われた通り、自宅待機を余儀なくされた。
特に西岡真珠は息子、麗亜との時間を第一に考え、共に過ごしていた。その3日目の出来事。それがアンティキティラのナナ・ティームースとの出会いだった。
ナナ・ティームースは、アンティキティラでの激務に嫌気がさしていた。そんな中、以前から研究対象だった『ミューバ』の食文化への憧れは、日に日に膨らんでいき、ついにハイメイザーの腐神化という異常事態に乗じて、
ズッ! ズルズルッ!
「きゃーん♡ これがラーメン! 食べるのにコツはいるが、なんという美味い食べ物なのだ……!」
「ナナさんってラーメンも食べたことなかったんだね。でも、それカップ麺だし。あーあ、
「ガリュウのチャーシューメン?」
「そう! チャーシューがとろけるんだよ!」
『ほう。チャーシューがとろけるのか。それは是非、食してみたい』
ナナの食欲は凄かった。手巻き寿司をペロリと平らげ、続けてカレーにグラタン、カップ麺。どれも感激しながら食べていた。
その姿は、ふわふわのパンケーキやかき氷をきゃあきゃあ言ってる食べる女子高生となんら変わらなかった。
「ねえ、ナナ」
「なんだ? シンジュ」
「あなたって何歳なの?」
「何年生きているのか? そういうことだな?」
「そうよ、私は35歳なんだけど」
『私は4500年は生きている』
ズズゥッ!
ナナはカップ麺のスープを飲みながら答えた。
「ええっ? 4500年?」
『そうだ。アンティキティラ人は基本的に生きようと思えば永遠に生きられる。ただ……』
「ただ?」
『能力のない者は、処分される』
「処分って……」
『あたりまえのことだ。いたずらに人口を増やす訳にはいかないからな。妊娠に出産、殺処分。すべて政府の管理下に置かれている。価値のある生命ほど長く生存していられるというわけだ』
「あなたには価値があるわけね?」
『さっきも言ったが私はティームースの血統だ。生まれた時点で価値があるのだ』
「へえ」
(永遠の命。得るとそんな未来が待ってるんだ……)
『シンジュ。寿司、カレー、グラタン、ラーメン、美味かったぞ』
「それはよかったわ♡」
『私は少し睡眠をとる。その間にもうひとりのブラックナイチンを呼び寄せておけ。ふたりに話がある』
「藤花を? わ、分かったわ」
『では……』
ナナはソファーに横になると1分も経たないうちに深い眠りに落ちた。
『スウ……スウッ……』
「4500歳か。寝顔もかわいいのに。苦労してきたのね……」
『ふんがぁぁあっ! ふんぎゃああっ! ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!』
「ナナいびき、うるさっ!!」
「ナナさん、すげー♡」
麗亜の恋心は、このぐらいのいびきでは揺らがなかったみたいです。
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