第179話 カテゴリー2の実力
時は3日前に遡る。フロッグマンのスマホにけたたましい警報音がなり、ピラミッドの崩壊を伝えたあの時だ。
『あいつら、ピラミッドをぶっ壊しやがった。ゲロッ!』
「教祖様。これはもうシヴァがハイメイザーによって破壊、もしくは機能停止させられたということですか?」
はぐれは天を仰ぎ見た。
「さすがハイメイザー、やることが早い。あなたの言う通りでしょう。もう彼らが恐れている物はなにもなくなったわけです」
「ピラミッドを破壊するとかどんだけのパワーなのよ。私や藤花がどうあがいても、あんなの壊せないわよ」
「無理ですね……」
『残酷神の私なら、やってやれなくもないけど!』
杏子は地面の石ころを蹴り飛ばした。
『残酷神は最強ッ! ゲロッ!』
「ハイメイザーは次元が違います。残酷神さんにもピラミッドは壊せるかも知れません。ですが、彼らを倒すことは無理です」
はぐれは楽観的な杏子とフロッグマンに厳しい視線を向け言った。藤花は異星人であるはぐれに、藁にもすがる思いで尋ねた。
「教祖様。ハイメイザーを倒す秘策的なものはないんですか? 弱点とか……」
「弱点に関しては、彼らの存在が『
「ピラミッドを破壊するほどの、強力なパワーを持っていますね……」
「私としたことが、甘い考えでした」
暫くの沈黙の後、真珠が口を開いた。
「それにしても、この状況をアンティキティラの方々は、どのような気持ちで見てるのかしらね?」
『ミューバの腐神退治』
それはアンティキティラの仕事。ミューバ人に程よい力を与え腐神を駆逐させることにより、この星の成長と発展を淀みなく未来へと繋いでいく。
そんなRPGのような手法でアンティキティラとミューバ、双方のカテゴリーポイントは加算されていく。
ましてや、アンティキティラは憧れの精神生命体、カテゴリー1が目前。この異常事態に頭を抱えているのは、みなさん知っての通り。
「間違いなく、慌てているでしょう。これまでの数万年の努力が水の泡になってしまってはたまりませんからね」
「そうならさ、私たちの仲間、増やしてくれたりしないのかしら?」
真珠のその発言に、藤花は一瞬ときめいたが、自分たち程度の実力の仲間が何人増えてもハイメイザーを倒すことはできない。
『焼石に水』
まさにそれでしかない。いま必要なのは圧倒的な
「アンティキティラもこの異常事態をただ傍観しているということはないはずです。なりたくて仕方がないカテゴリー1がもうすぐそこですから」
「アンティキティラの人たちはなにやってんのよ! さっさと強力な歯車のタトゥーをアンティーにつけちゃってよ!」
真珠はアンティキティラの後手後手の対応に苛立ちを隠せない。はぐれは真珠を落ち着かせるように言葉を発した。
「私が思ったのは、ひとつの可能性としてアンティキティラの戦士が事態収束の為にここへやってくるかも知れない。ということです」
はぐれの放った『ひとつの可能性』に、その場の空気がピリつく。
「アンティキティラ人が直接?」
「この第3ミューバの担当が、アンティキティラ人だったのは運がよかったとしか言いようがありません」
「それはどういう意味ですか? 教祖様」
「アンティキティラ人は戦闘に長けています。あなた方が扱う能力や炎、それはアンティキティラ特有の聖なる力。この異常事態に業を煮やしたアンティキティラが、最強の戦士でも送り込んできてくれたのなら、少しは状況が好転しそうなものですが」
「アンティキティラ最強の戦士?」
「腐神。強いと思われたかも知れませんが、お話した通り、肉体のない平和ボケした精神世界の住人の成れの果てです」
「そ、そうでしたね」
「それに比べ、カテゴリー2はどんな形であれ肉体を持ち、過ちを犯す惑星の統制に赴くこともあるので、かなりの戦闘能力を秘めているのです」
「と、いうことは、ハイメイザーを除けば1番強いのって……」
「カテゴリー2になりますね」
「てことは! はぐれっちもカテゴリー2よね? あなたも相当強いってこと? 全然そうは見えないけど」
「アンティキティラに比べたら全然たいしたことありません。残酷神さんにも勝てないかも知れません」
『私に勝てないかも? かもって、勝てるかもとも取れるけど?』
「いえ、私は命をかけた戦いなんてまっぴらごめんなんです。ただ教祖遊びがしたかっただけなので」
意外にも、残酷神に匹敵するという弥勒院はぐれの実力。さらに、それを上回るアンティキティラ人の存在。その存在が地球にやって来たようだ。
シュワゴオオオオッ!!
『着いたのだ。第3ミューバ』
小型宇宙船ドロシーは、ひとまずアメリカ『グレートキャニオン国立公園』に着陸。アンティキティラの女戦士ナナ・ティームースはミューバに降り立った。
ズザッ!
『さて、ではまずこの辺で美味いものを食える店を探すとするか。おっと、その前に……』
ピッ!
シュワゴオオオオッ!
『ドロシーを低脳なミューバ人が見つけるといちいち面倒だからな。宇宙空間に停泊させておくとして……では、行くかッ!』
ギュンッ!
アンティキティラ最強戦士ナナは、ハイメイザーを無視し、手始めにアメリカから美味いもの探しの旅に出発した。そして、3日後、日本にやって来るのであった。
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