第166話 探し物はなんですか?
杏子はゼロワールドを作る為に集めた腐神の中に、まさか自分の残酷神の力で抑え込めない存在がいるとは想像もしていなかった。
『さっきは完全に油断した……次にアイツらが私の前に現れた時が……本当の終わり。ちゃんと後始末するから、許してね……藤花、そして西岡さん」
ザシャ……ッ!
杏子は、藤花と真珠に土下座した。
「牙皇子が土下座したわ……プライド高そうなのにねぇ」
「杏子ちゃん、分かったよ。半分は私の責任。一緒に戦うよ」
『危ないよ。私は……残酷神の力を全開にして……この命に変えても……』
「そういう発想はやめて。杏子ちゃんは極端なんだよ……」
『だって……急がないとッ! あの2人が人間をどんどん殺していったら……アンキテラが高エネルギーでこの世界を無にッ!』
「知ってる。教祖様から全部聞いたよ。宇宙の
『はあっ……分かったよ』
「残酷神のあなたを上回るパワーの持ち主です。確かにのんびりはしていられませんが、作戦は立てるべきですね」
杏子は、方舟水晶のネックレスの力を知ってから、ずっと思っていた事を直接、はぐれに聞く事にした。
『永遠の方舟教祖……あなたは宇宙人……なのよね?』
「うふふ。そうですよ。カテゴリー
『カテゴリー2? 永遠の方舟……そんなに上だったんだ。ちなみに……観測者アンキテラは?』
「正確にはアンティキティラと言います。彼らもカテゴリー2ですよ」
『そうだったんだ。……このネックレス。あなたが作ったのよね?』
ジャラ……
杏子は胸からネックレスを取り出しながら言った。
「あら……あなたも永遠の方舟の信者だったのですね」
『これがなかったら、私が今頃この世界を無にしていたかも知れない。これのお陰で残酷神と契約しても、自我を失わずに済んだ』
「うふふ。お役に立てた様でよかったですよ。どおりで残酷神にしてはおとなしい印象だったわけですね。5年も何もしないとか、永遠の方舟信者には手を出さないとか……」
『マジでそこは感謝してる。あの2人は知ってるのかな? この世界を壊滅させたらアンキ……アンティキティラのエネルギー砲が地上に降り注ぐ事……』
「たぶん……ですが、分かってると思います。なんといってもハイメイザーですから」
『な、ならこの世界を……ぶっ壊す様な事はしないかなっ!?』
杏子のその楽観的なセリフを聞いたはぐれは目を瞑り、一呼吸してから話し出した。
「さっき、あなた……目をどうこうされた……みたいな事を、言ってませんでした?」
『え? ああ……この右目の事? うん、ここに来る前にあの亜堕無とかいう腐神に取られちゃったんだよね……』
「ハイメイザーの弱点が唯一あるとするならば、それは存在が『高レベル』過ぎて、ミューバ人との融合がカテゴリー1の腐神よりも不完全……なのではないか? という事です」
『あ、あの強さで不完全? で、でも確かにアイツからは大した力を感じ取る事ができなかったし……確か目が見えにくい……とかも言ってた……それが『融合が不完全』って事なのか……』
「そうですか。目ですか……かなり嫌な予感がしますね」
「嫌な予感とは……なんなんですか? 教祖様っ!」
「その亜堕無……ですか? 彼は残酷神の目で……『ある物』を探していたのかも知れませんね」
『ある物? 確かに奴は人間と契約してからずっと、アジトのビルの最上階から外を見ていた……全く何を見ているのか分からなかったけど……』
「やはりそうでしたか……残酷神の目を手に入れた亜堕無は……もうその探し物を見つけたのかも知れませんね」
「そ、その探し物って一体何なんですかっ!?」
藤花はふたりの会話を聞きつつ、『ひょっとして?』と思う事があったが、はぐれに尋ねた。
「ハイメイザーが探していたもの……それは……ミューバではこう呼ばれています。『ブラックナイト衛星』……みなさん知っていますか?」
藤花は思った。
(キタ……! つ、ついにブラックナイト衛星の謎まで解けるのねッ! いろいろ想像はしてたけど……えっ!? まさかッ!?)
藤花の知的好奇心は激しめに刺激される事になる。
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