第19章 アウトオブカテゴリー
第164話 猛省して
腐神『
イバラの可愛さにグラマラスを足した様な見た目だった。
その2体の腐神はゆっくりと宙に浮くと、何か喋りながら、笑いと共に飛んでいった。その場の4人を全く気にする事もなく。
ミーン、ミーン、ミーン……
斬咲、エクレアの発する異様な空気を察知して、鳴くのをやめていた蝉たちが少しづつ鳴き始める。いつのまにか雷雲も消え去った。
『牙皇子様ッ! 牙皇子様ッ! ゲロゲロォッ!』
亜堕無と威無の出現に、正に『蛇に睨まれた蛙』状態だったフロッグマン。必死に杏子を起こそうと声をかけ揺らすが起きる気配がない。
「か、加江、君……」
『く、黒宮っ!! ゲロッ!』
亜堕無の膝蹴りを顔面に喰らい、気を失っていた藤花。仰向けになり、フロッグマンに問いかける。
「さっきの腐神、仲間なんじゃないの? 牙皇子だった杏子ちゃんを、攻撃してたよね……?」
『あ、あ、あれは完全に想定外ってやつだっ! ゲロゲロォッ!』
「想定外……?」
『あんな強い奴だなんて思ってなかったッ! 完全にザコだと思っていたんだっ! ゲロッ!』
「斬咲が言ってた大した力もないくせに……反抗的な2体の腐神。それがアレってわけね……』
『そ、それよりっ! 黒宮の仲間がヤバいッ! 早く牙皇子様を起こして治療しないとっ! 死ぬぞッ! ゲロゲロッ!』
「うっ、西岡さんがっ?」
ボタボタボタッ!
藤花はゆっくりと体を起こす。鼻骨が折れた為、鼻血が一気に流れ出る。頭がクラクラして、目もボヤける。
真珠の腹部からは
「杏子ちゃんに、こんな傷を回復する力があるの……?」
『このぐらいの傷は朝飯前だっ! なんと言っても頭だけから復活できる力を持ってる人だからな! ゲロッ!』
「そうだったね……」
藤花は杏子に近づいて、そっとキスをした。ガチっと自分の歯と杏子の牙が当たった。改めて、自分のせいで杏子をこんな姿にしてしまったのだと悲しくなった。
もちろん、イバラの事も。
『んはっ……!!』
杏子が嘘の様に目を覚ました。
「大丈夫? 杏子ちゃん……」
『な、なにそれ? 藤花っ!! 鼻血ぃぃっ!! 痛くない? 痛いよねッ!? すぐ治してあげるからっ♡』
「私よりも先に、西岡さんをお願い。死んじゃう……」
『西岡さん? あっ、さっきのおばさんね。分かったよ』
杏子は真珠の体に手を
『はあっ! ベホマドゥンッ!』
『絶対その呪文みたいな言葉言わなくても治せますよね? ゲロゲロッ!』
『雰囲気……大事だと思わない?』
『大事ですね。はい。ゲロゲロッ!』
シュワワワワァァアッ!!
真珠の体が細かい泡に包まれた。
シュウウウウッ……
30秒程でその泡は消えた。
『これでこの人は治ったよ。褒めてッ! 藤花ッ!』
「杏子ちゃん、すごい。最高。ファンタスティック」
『えへへ♡ だよね?』
「じゃあ、私もお願い」
『おけまるですっ♡』
その後、杏子は自分の傷も回復。藤花、真珠、杏子、フロッグマンの4人は、とりあえず強い日差しを避け、木陰に座り話す事にした。
『イバラの腐神化』
残酷神をも一捻りにする圧倒的パワー。そんな力をどうして杏子は『ザコ』として扱ってしまったのか? 藤花は疑問が尽きない。
『本当に力を感じなかった。ゼロワールド最弱だと思ってたもん』
『右に同じ、ゲロッ!』
「腐神がイバラちゃんの体を乗っ取るなんてっ……信じられないよ。どうやって戦えばいいの?」
混乱する藤花に対し、杏子はあっけらかんと言い切った。
『天使イバラはもう消えてる。完全にすべてを乗っ取られてるから、気にせずに戦って大丈夫だよ』
「そういう問題じゃ……」
『じゃあ私があの威無、殺ってあげるよッ!』
その言葉を聞いた藤花の顔は、一気に表情を失った。
「私、杏子ちゃんに言っておく事があるのを忘れてた」
『なあに? 藤花♡』
バチンッ!!!!
藤花は思い切り杏子にビンタをした。杏子は俯き、ガクッと力が抜けた。
『い、痛いよ。藤花……』
「杏子ちゃんは私の大事な仲間を殺した。仲間の大切な人も殺したっ! 罪のない人も殺したっ! 本当に許せない! 『私の為』とか本当にふざけないでっ!!」
『ご、ごめん……なさい』
「それからっ!! 私は杏子ちゃんが本当に死んだと思って、マンションから飛び降り自殺したんだよっ!!」
『と、飛び降り自殺ーっ!?』
「それを助けてくれたのが天使イバラ。イバラちゃんだったんだよ!」
『そ、そ、そ、そうだったの?』
「私が杏子ちゃんの事をそこまで想ってるとは思わなかったんだね。追いかけて自殺するとか考えなかったんだっ?」
『そ、そ、それ……は』
「天使イバラがいなかったら私は死んでたの。杏子ちゃんの考えが、いかに浅はかで馬鹿だったか分かるよね? 本当に猛省して」
『はい……』
「私の余命はあと3ヶ月もない」
『……えっ?』
「私は闇雲病に犯されてるの。余命3ヶ月を宣告された」
「闇雲っ? それテレビで見た事あるかもっ! 目が見えなくなって、いづれ体も動かなく……』
「それだよ」
『な、なんで藤花がそんな病気にっ! 私が治すッ!』
「私もイバラちゃんと一緒。アンティキティラの力で病は飛ばされてる。それと引き換えに力を得たの」
『藤花が死んじゃう! な、なんとかしなくちゃ……!』
杏子は急にあたふたし始める。
「私の事はどうでもいいの。とにかく杏子ちゃんがした事の後始末……するよっ!」
『うん……後始末……する』
その時ッ!
『き、牙皇子様あああぁあっ!』
『!? お前っ、鎖鎖矢餽ッ!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます