第160話 びしょ濡れの再会
グアゴゴゴゴゴゴゴォォッ!
まったくっ! 斬咲とエクレアさんを倒すなんて。どんだけ強いのよ、ブラック・ナイチンゲールッ! だけど、私が降臨したからには全滅してもらうッ!
ひとつ心配なのは、ブラック・ナイチンゲールを倒したらアンキテラがどう動くのか? という事。
いきなりエネルギー砲を放って、世界を空白の時間にしたりしないよね?
『ひとつ前の世界』でネル・フィードが暴れた時は、世界の人口が10分の1になった所でリセットが発動されたみたいだ。
その時は力ある者をどのタイミングで倒していたのか。ネルの記憶も飛んじゃってて分かんないって言うし。本にもそこまでは詳しく書いてなかったし。
とりあえず、ひとりぐらいは殺さずに半殺しで監禁しとこうかな。それで様子を見よう。
永遠の方舟信者以外は殺す。でも、そこまで一気に殺る必要はない。永遠の方舟の『偉大さ』が浸透して、信者が人類の頂点であればそれで十分。
あとは藤花と相談しながら、世界を再構築していく。どう? これでもリセットするの? アンキテラさん。わたしは馬鹿みたいに破壊や殺戮を楽しみたいわけじゃないんだからねッ!
全部、愛する藤花の為なんだから。
これで藤花の愛は全部 私に注がれる。私と藤花の楽園が完成するんだから♡
すううう……スタッ!
私は刀雷寺の境内に降り立った。
すると、私『牙皇子狂魔』の登場に声を荒げる奴がいる。小賢しいッ!
「やっとおでましね! 牙皇子狂魔っ! ずっとあんたを殺したくてさ、ウズウズしてたんだよっ!」
『赤髪、待っていた……』
こいつが噂のブラック・ナイチンゲール最強。通称、赤髪か。こいつは真っ先に殺すッ! でも、思っていたより可愛いくない? なんかめっちゃタイプなんだけど。私が藤花以外にこんな気持ちになるなんて。ん? あれれ? んんんッ!?
フロッグマンが私に近づいてきて耳打ちしてきた。
『牙皇子様、あれ、黒宮です。どうしましょう? ゲロッ!』
な、な、なんでー!? 藤花がブラック・ナイチンゲールッ!?
んなアホなっ!!
ど、動画っ! もっとちゃんと見ておけばっ! って確か赤髪は『ひょっとこのお面』つけてたよね?
うわぁ、全然気づけなかった。私とした事がッ!
ど、ど、どうりで可愛いわけだよっ! 赤い髪♡ ショートカット♡ 眼鏡はやめないでー藤花ぁ♡
ボボォンッ!
ギュアアッッ!!
「あんたを仕留め、くだらない計画はここまでにしてもらうっ!!」
『かっこいいなぁ♡ 惚れ惚れするじゃあないかぁ♡』
(藤花っ♡ ヤバいッ! そのコスプレ似合いすぎだよぉ♡
ドキドキッ!
(そうね、愛する杏子ちゃんを殺したゼロワールドの教祖だもんね! そんなに怒ってくれて。めっちゃ愛を感じるぅっ♡ めっちゃ嬉しいぃぃぃっ!!)
じゅわ♡
(こんな時にめっちゃ濡れてきちゃったあ♡ 仕方ないよぉ、だって藤花の私への愛をビンビン感じるんだもんっ♡ ヤバいッ! パンツの替えが欲しいかもっ)
フロッグマンが、炎全開の剣を構える藤花をなだめている。うん、もういいよ。もう我慢できないもん。私はここで藤花と再会するっ♡ ハグしたいっ! キスしたいっ!!
『赤髪、黒宮藤花、会いたかった』
私は震える手で、髑髏の仮面を外した。
ガチャ……
そんな握力のない手だから、仮面が地面に滑り落ちた。
藤花が私を見てる。すっごい驚いた顔をしてる。どう? 杏子ちゃんだよ? 生きてたんだよっ! 私っ!
『まったく、赤髪が藤花だったなんて、今フロッグマンに聞いてびっくりしちゃったよ。どうしたの? めちゃくちゃイメチェンしてない? かわいいけど♡』
(早く飛びつきたいッ! で、でも、ここは冷静な杏子ちゃんでいなくては。イメージを崩すわけにはいかない!)
シュウウウウッ!
あっ、炎の剣が消えたっ!
ガクッ
あっ、藤花っ! 力が抜けちゃって座り込んじゃったっ! 無理もないよね。藤花もきっと、びしょ濡れだね♡はぁあん、尊い♡
『今のこの世界……素晴らしいと思わない? ねぇ? 藤花、笑った顔をみせてよっ!』
私は藤花に駆け寄り手を握った。
『冷たいじゃない。大丈夫?』
私のその一言に、藤花の目つきが一気に変わったんだ。
「大丈夫? それはこっちのセリフだよ。杏子ちゃん」
『えっ?』
「この世界が? 素晴らしい? なにを言っているのっ?」
『えっ? な、なんで? 私は藤花の為に、ゼロワールドを作って……』
「やめてぇぇっ!!!!」
『えっ? なんで? 藤花!』
「杏子ちゃん、ぶっ壊れてるよ」
『ぶっ壊れてる? 私が? な、なんでかなぁ? あはは……』
『黒宮。すべては5年前、俺がお前に『方舟様いじり』をした所から始まったんだよ。ゲロッ!』
私達は、事の成り行きをフロッグマンと代わる
話を聞き終えた藤花が、ため息混じりに口を開いた。
「杏子ちゃん、もうやめて」
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