第159話 一瞬の出来事

 腐神『那堕冷なだれ』との契約者

『白雪』


 腐神『底無死そこなし』との契約者

『ヘドロ』


 腐神『あやつり』との契約者

鎖鎖矢餽ささやき


 腐神『強暴きょうぼう』との契約者

 『ライノマン』


 腐神『牙羅苦堕がらくた』との契約者

 『魔亞苦マークツー


 腐神『血死武鬼ちしぶき』との契約者

 『斬咲きりさき


 腐神『羅苦雷らくらい』との契約者

 『エクレア』


 そして、もちろんフロッグマン。




 この8体の腐神は、残酷神である私に非常に従順だった。ところが、残りの2体。一方は耳がよく聞こえないのか私の命令にまるで反応しない。


 そしてもう一方は、どれだけ鎖鎖矢餽が促しても契約したがらないらしい。


 『ハズレ』


 腐神ならどれでも そこそこ強くて使えると思っていたから、さげぽよ。


 私は藤花との思い出の場所。所謂いわゆるパワースポットをブラック・ナイチンゲールとの戦いの場に選んだ。


 アフロタワー『ライノマン』


 永遠の方舟本部『魔亞苦・痛』


 刀雷寺『斬咲』&『エクレア』


 強力な腐神達が次々とやられていった。本来ならば、永遠の方舟本部でブラック・ナイチンゲールを倒し、藤花と再会する予定だったんだ。



 なのにッ!



 私の怒りは頂点に達した。事前にYouTubeでも言っておいた。


『あり得ない事だが、もしっ! その2人を倒そうものなら、次は私が直々に貴様らを血祭りに上げてやるッ! 覚悟しておくがいいっ!』


 いやぁ、絶対に斬咲とエクレアさんは負けるわけないと思っていたんだよね。『言う事聞かない』のと『契約したがらない』のは、私がチェックした感じでは、白雪にも劣る実力しかなさそうだったんだよね。


 そうなんだけど、実は斬咲とエクレアさんを刀雷寺に向かわせた直後だった。その出来事が起きたのは。


 私の言う事を聞かない、もしくは聞こえていないと思っていた、その腐神。ずっと外をボーっと見ていたかと思ったら、急に私に話しかけてきたんだ。


『すみません。僕、目がよく見えなくて、あなたの右目をもらえませんか? 右目だけでいいので』


『な、なんだそれは? なにを言っている?』


 バシュンッ!


 それは一瞬の出来事だった。


 そいつは、私の右目をくり抜いたんだ。残酷神である私の、目にも止まらぬ早さで。


『ううっ! な、なにするん……』


『ありがとうございます』


 グリグリィッ! ボトッ!


 そいつは自分の右目をくり抜き、床に捨てると、私の右目をはめ込んだ。おいおいっ! それで見えるわけぇ?


 グチュグチュグチュッ!


 私は右目の再生を試みた。


『な、治らないッ!? だと?』


 傷は塞がったものの、眼球は再生出来なかった。そういうものなの? 残酷神の再生能力をもってしても治せない事なんてあるの?


 私は慌ててネル・フィードに聞いたんだ。


(ねえっ! ネルっ! 目が治んないんだけどっ! どゆこと?)


『……ありえんな』


(いやいやいやいや! ありえてますけど! 眼球復活しないんだもん!)


『俺の言ってるのはそういう事ではない。そこの腐神、ヤバいかもしれん』


(な、なにが?)


『私の力で再生できないのは……私の力を上回る、なんらかの『強い意志』が込められたダメージのみだ』


(って事は? あいつがネルの力を上回ってるって事?)


『そういう事になるな』


(そーんなバカなっ、どんだけチェックしてもザコだよ?)


『とにかく、今はそっとしておけッ! あいつはずっと何を見てやがるんだ? それも気になる』


(そうなのよ。ここに来てからずーっと外ばっか見ててさ。超イミフなのよねぇ〜)


 その腐神は私の右目で『よく見えます』と言って喜んでいた。なにを見てんの? って聞いても完全に無視かますし、ネルの言う通り放っておく事にした。


 数時間後、斬咲とエクレアさんの戦いを監視させていたフロッグマンから、2人がやられたという連絡が入った。


 私はすかさず刀雷寺へ向かう事にした。斬咲、エクレアさん、ブラック・ナイチンゲールを2匹殺してくれた。ありがとう。


 残りは私が殺るッ!


『ディメンショナル・ドアッ!!』


 グアゴゴゴゴゴゴゴォォッ!


 私は一瞬で刀雷寺に降り立った。

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