第156話 崩壊ッ!報道天国

 フワフワ……フワフワ……


 私とフロッグマンは宙に浮きながら、大きな窓の外側から、報道天国のスタジオを眺めていた。


 今日のトップニュース。


『熱中症で児童24人が救急搬送』


 放送開始直後、画面がVTRに切り替わった。


『行くよ! フロッグマン』


『ゲロゲロッ!』


 私は右手をスタジオの大窓にかざした。


『ディメンショナル・ドアッ!』




 ブオォンッ!




 次元の扉を開き、私たちは楽勝でテレビ朝霧に侵入。




 ス──────ッ!



 スタッ!


   スタッ!



 番組スタッフが唖然とする中、私たち2人はスタジオに降臨。


「なんなんだッ! お前らはっ! 放送中だぞ! おい、早くつまみ出せッ!」


 司会者のその声に、現場のスタッフが恐る恐る私たちに近づいてくる。


『えーっと、あなたたちの中に、永遠の方舟の信者っていますか?』


 私のその問いに、返事をするやつはいない。やっぱりなかなかいないよね。方舟信者なんて。


『はい。じゃあ、みなさん。さようなら。バーンッ!』


「うっ!」


「がはっ!」


「おわっ……!」


「ひゃっ……!」


「ぶはっ!」



 バタバタバタバタッ!


 私は近づいて来た奴らに向けて、ネル・フィードの力を放ち、心臓を爆破してやった。


 ガシッ!


「ひええええっ……!」


 さらにフロッグマンが、司会者の男の頭を片手で掴み、スタジオの壁にぶん投げた。


 グシャアッ!


『ディレクターさん、こんばんわ。聞こえてる? 今から私たちの存在を伝える放送を始める。今後の人類の為に必要なことだ。ちゃんと放送しないとここにいる人間をさらに殺すよ』


 こうして報道天国をジャックした私は、先程まで司会者の座っていた席に座り、その後ろにフロッグマンを立たせ、放送を再開させた。


 ボイスチェンジャーを装着し、テレビの向こうの愚かな人類と、アンキテラの『力ある者』に語りかけた。
















 



 一方、時を同じく、風原家にいたアンティキティラの力ある者『天使イバラ』『風原美咲』この後に力を得ることになる『黒宮藤花』は、ちょうどこの放送を目撃いる。


『みなさん、こんばんは。この番組は現在、我々『ゼロワールド』がジャックさせてもらっています』



「ゼロワールド? なによそれ!」


「カエル野郎の親分!?」


『ゲロゲロッ!』


『どうでしょう? みなさん、最近ある地域で、この子が活躍してくれているのをご存知でしょうか?』


『ゲロゲロッ♪』


「あのカエル喜んでない? ちゃんと感情があるんだ……」


「カエル野郎を『この子』とか。あの髑髏どくろ仮面、むかつくっ!」


『フロッグマンなんて名前まで付けてもらって、ありがとうございます』


「礼義正しいのが逆に激しく不気味」


『我々『ゼロワールド』は、そうですね、世間で言うところのカルト……カルト教団にあたります』


「言われなくても、という気はしますが、なるほどですね」


『カルト教団ゼロワールド。私は教祖の『きば皇子おうじきょう』と申します』


「きば……おうじ?」


『牙の皇子おうじ……そして、狂った魔王で牙皇子狂魔だ。覚えておけッ!』


「急にカルトっぽくなったじゃん! こわーっ!」


『我々は今のところ総勢5人しかいないのだ。まぁ、それでも十分目的は達成できるだろう』


「目的……気になりますね」


 牙皇子が少しズレた仮面を直してから語り出した。


『我々 ゼロワールドの目的は世界の再構築。貴様ら人間をこの世から消し去ることだ……』


「なに言ってんの? この人、カルトじゃなくてバカなんじゃない?」


天使あまつかさん。そうとは言い切れませんよ。牙皇子は『我々は5人』と言った。フロッグマン1匹とってみてもかなりの化けものだ。あんなのが、まだ他に3体はいるということです」


「それはそうと、あんな化け物をどこから連れてきたのかが激しく謎すぎ」


『テレビの前の皆さん。私を人間だと勘違いしていませんか?』





「ゼロワールド……牙皇子!」


 藤花は拳を強く握った。







『私は『残酷ざんこくしんネル・フィード』と契約を結んだ! 私の肉体は残酷神と一体化し、もはや神となったのだ!!』


「残酷神……?」


『ここにいるフロッグマンも腐神ふしんと契約を交わしたれっきとした神だ! お前たち人間になす術はない! この突然訪れた終末に嘆き、怯え、苦しみ、滅びゆくがいいっ!!』


「こいつのせいで、私の大切な杏子ちゃんがっ!」


 藤花は怒りによる震えを抑えることができないでいた。



























 再び場面は報道天国のスタジオへ。






『フロッグマンが次に現れるのは、あなたの街かも知れませんね……』


『ゲロゲロッ! ゲーロッ!』


『それでは、ゼロワールド計画のスタートッ!』



 ブチブチブチィッ!!



 私はネル・フィードの力で、一気に全てのカメラの配線を切断した。


『よし。じゃあ、帰ろうか。フロッグマン』


『ゲロゲロッ!』





 グアゴゴゴゴゴゴゴッ!


 一度行ったことのある所へは、私のディメンショナル・ドアで一瞬で行ける。次元の扉を開き、W市の本拠地へと私たちは戻った。



『フロッグマン、どうだった? 私、決まってた?』


『ゼロワールド計画のスタートッ! って言って、その瞬間画面が真っ暗。かっこよすぎっすね! ゲロッ!』


『よきよき♡ さてと、白雪は見つけたかな? 生意気な力ある者をさッ!』



 この時の私はまだ余裕だった。腐神は最強だと思っていた。


 

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