第153話 これはこれで

『ゲッロォ……』


 くそっ!フロッグマンをふっ飛ばすとか普通じゃないッ!力ある者……そっちもそれなりの化け物って訳ねッ!


『フロッグマンッ!私も頭だけの状態だしッ!サクッと大跳躍して飛んでアジトに戻れッ!』


 私は慌ててフロッグマンに指示を出したっ!



『ゲロゲロォッ!』

(まっ、そうだよね……!)




 ビヨ──────ンッ!








 ギュンッ!!






 フロッグマンの大跳躍は一気に地上30メートルに到達するッ!そこから飛び去るんだ。さすがに追ってはこれないと思うんだけどッ!








『どうなのッ!? フロッグマン、追いかけて来てるッ!?』


『来てないですね。飛べはしないみたいです。ゲロッ!』


『なに? なにが起きたの?』


『金髪の女でしたね。コスプレみたいな黒い服を着て……光のような速さで顔面に蹴りを入れてきましたよ。ゲロッ!』


『ふぅん……金髪の女ね……』


『普通の人間とは発してるオーラが違いすぎますよ。探そうと思えばそれを辿って探せそうですね。ゲロゲロッ!』


『分かったよ、フロッグマン。で、藤花の様子はどうだった?』


『あ、あぁ……かなりビビってましたよ。俺の顔を見て……おしっこ漏らしてました。ゲロッ!』


『と、藤花のおしっこぉ!? す、少し見たかったなぁ……』


『牙皇子様。アジトに着きますよ。ゲロゲロッ!』


 ギューンッ!


 ……スタッッ!



 私の頭を飲み込んだフロッグマンはアジトに到着。開けっぱなしの窓から中に入った。さぁ、早く吐き出して!臭くて頭がクラクラしてきた……。



『オエエエッ……!』



 バシッ!



 フロッグマンは吐き出した私の頭を両手で受け止めた。


『大丈夫でしたか? ゲロッ!』


『見れば分かるよね? あまり大丈夫ではない……きちゃない……』


 私はとりあえず、首から下の体の再生を始める事にした。


『床に置いて』


『分かりました。ゲロッ!』



 私は目を瞑り、肉体再生のイメージを膨らませた。


『はああああああっ!!』

















 グチュグチュグチュグチュ……





 徐々に細胞が分裂していき、肉体を形作っていく。3分かからずに完全に再生できた。



 グッグッ! トントンッ!


 グルングルンッ! 



『ふう……よしッ! ちゃんと動くな。問題なしね!』


『き、牙皇子様……ふ、服とか……ど、どうしましょうか? さすがに裸では……ゲロッ!』


『そうか……っておいっ! 今、あんた私のおっぱいガン見したよね?』


『してませんッ! ゲッロォ……』

(そりゃ、見ちゃうって……こうみえて俺、高2の男子だぜぇ……)


『ちっ! 私の体は藤花だけのものなんだからねッ!』


『分かってます! ゲロッ!」


『とりあえず、シャワーを浴びたいな……家に行ってくる。服も取ってくる』


『裸で行くんですかっ!? ゲロゲロッ!』


『そんな痴女みたいな事しないってば。私にはこれがあるから大丈夫』


 私は自宅の浴室を思い浮かべながら、かざした右手に力を込めた。


『ディメンショナル・ドアッ!』


 グアゴゴゴゴゴゴゴォォッ!



 次元の扉が開き、オフィスビルの最上階にあるこのアジトと、私の家の浴室が繋がった。


『どこでもドア……便利ですね。ゲロッ!』


『ディメンショナル・ドアよッ! 私は『ドラいもん』じゃねーっての! じゃあ、すぐに戻るから』


『分かりました。ゲロゲロッ!』












 シャ───────ッ!







 私は髪や顔に付いた、フロッグマンの胃液などを洗い流した。


 藤花……杏子ちゃん死んじゃったね。寂しいね……辛いね……私の事、ずっと忘れないでね……。


 さあ……お次は世界の終わりがやって来るよ……永遠の方舟の信者だけは助かるんだ……どう?藤花。まさに望んでいたシチュエーションじゃない?


 永遠の方舟の信者でない者は……天には昇れない……地獄送りにしてやるんだ……。



 キュウ……キュ!



 私はシャワーを終え、浴室から出た。洗面所の鏡に私が映る。可愛かった栗色の髪は灰色に……目もウサギみたいに真っ赤だ。歯も鋭い牙になってる……。


 ネル・フィードの言ってた通り……頭を食いちぎられた瞬間に……私の残酷神の力が溢れ出たんだ。それが姿を変貌させてしまった……。


















『でも、これはこれで可愛くないっ? あはははッ!』



 私は服を着て、アジトへ戻った。

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