第143話 修学旅行

 加江に腐神を喰わせて1カ月後。爽やかな5月。私たちは、修学旅行で関西方面にやって来た。


 今日のメインは『刀雷寺とうらいじ


 ハッキリ言ってこの修学旅行、刀雷寺に来る以外、私はどーでもよかった。


 なぜなら刀雷寺には結ばれた2人の愛をさらに強くするという言い伝えがあるから。


 刀神とうしんの刀は新たな異性の誘惑を断ち切り、雷神のいかずちは痺れる様な恋心をいつまでも続けさせる。


 昔は不倫なんてしたら『死刑だった』なんてことを読んだ気がする。自分の命を守る為にも、昔の人はここに足を運んでいたのかも知れない。


 私は断罪門でのクラスの記念撮影を終え、別クラスの藤花とすかさず合流。大仏ちゃんのいる本殿に向かった。


「これで藤花と私の愛も永遠よ♡」


「杏子ちゃん、声大きい。周りの人に聞こえちゃうよぉ……」


「なに恥ずかしがってるの? 私は大声で叫びたいぐらいだよ♡」


「そ、それはやめてあげてっ!」


「あはははっ」


 本殿には刀神、雷神の産みの親である慈愛じあい大仏ちゃん。温かな眼差しと威厳いげん漂うオーラで私たちを出迎えてくれた。


「大きいね」


「初の生大仏なまだいぶつちゃん! 藤花との永遠を願うのだ♡」


「こら、生大福みたいに言わないの!」


 私たちは目を瞑り、藤花の『左手』と私の『右手』を合わせて参拝した。


 『永遠の愛』を!


 女同士でこの参拝方法をしてるのは私たちだけ。他の人は自分の願い事に必死で誰も私たちのことなんて見てなかった。


 藤花と合わせた手。あったかい。ベッドの中でいつも握っている藤花の手。今日もふわふわでかわいい手。このまま引き寄せてキスしたい。ああっ、我慢できない!


 藤花と私は参拝を終え、敷地内の他の建物の見学に向かうことにした。でも、その前に……


「藤花、トイレ行こ」


「えっ? うん。いいよ」


 予想通り、割とどこのトイレも混んでいた。特に御朱印授与所そばのトイレは列になっていた。私はそれとは真反対の地味なスポットのトイレに向かった。


「こっちは空いてたね」


「よし、藤花行くよ」


「私は大丈夫だよ。待ってる」


「そうじゃなくて! 来てっ!」


 私は藤花の手を引っ張って、一緒にトイレに入った。


「えっ? ちょっと、杏子ちゃん!」


 バタンッ! ガチャ!


 私は個室に藤花と2人で入った。


「藤花……2人きりだよ♡」


「えぇっ!? そ、そうだけど……」


 戸惑う藤花に構うことなく、私は藤花にキスをした。


「んっ、杏っ……んはあっ♡」


「藤花、おいしいよぉ……♡」


 私は我慢できずについ、藤花のパンツの中に手を入れてしまった。


「あっ! ダメッ、汚いからっ」


「気にしない、気にしない♡」


 ぬるんっ♡


「んはあっ……♡」


 感じてる。真面目な藤花が刀神寺のトイレで私にクリを触られて感じてる。なんてエロいシチュエーション♡修学旅行最高じゃん♡


 さすがに周りが気になって藤花はイケなかった。私は可愛い藤花の顔を見つめながら、藤花の『あそこの匂い』のついた指を嗅いだ。


 くんくんっ♡


「やーめーてっ!」


 藤花がそれを照れながら、怒った顔で邪魔してくる。


「いいじゃんっ! いい匂いだよ♡」


「ありえないんですけどっ!」


 くんくんっ♡


「う〜ん…… 最高♡」


「杏子ちゃんの変態っ!」


「そうです! あたすは変態です!」


「んもうっ! あははっ」


「あはははっ!」


 刀雷寺。


 藤花、また私たちの思い出の場所が増えたね。このトイレはパワースポットだな。なんちゃって♡

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