第146話 暗闇に傾く天秤
初めて行った満開のSAKURAのライブから2ヶ月が過ぎた。
天使イバラ、天使イバラ、天使イバラ、天使イバラっ!
あのライブ以降も、毎日毎日天使イバラの話ばかりで私はうんざりだった。でも今に、天使イバラは不治の病に侵される。アイドルどころじゃなくなる。それだけが私の心の支えだった。
今日も昼休み、藤花がニコニコしながら私に話しかけてきた。嫌な予感がした。
「杏子ちゃん!」
「どうしたの? 藤花♡」
「また来月、まんさくが竜巻に来るんだよッ!」
はい、嫌な予感的中ー。
また私にあれに行けと? 藤花、君はなんて残酷な子なの。私のこの切ない気持ちに全然気づいてないんだね。私のことなんてたいして好きじゃないの? 天使イバラがそんなにいいわけっ!?
その時の激しい怒りのせいで、残酷神の力が洪水のように勢いよく私の全身に流れ込んだ。姿が化け物になるんじゃないかとヒヤッとしたけど、私は自分の姿を保っていた。ホッとした。
その場は藤花に合わせ、まんさくのライブに一緒に行くことを約束をした。その頃には天使イバラは立つこともできなくなっているはずだしね。あは、あはははッ!
ガチャン
私は帰宅。
自分の部屋に戻って来た。
「んはあ、はあっ」
妙に息苦しさを感じる。怒りの感情が
「私はどうしちゃったの? ネル・フィード! これはどういうこと?」
私が残酷神をこの身に宿して5年。こんな感覚は初めてだった。自分が自分じゃなくなるみたいな嫌な感覚に襲われていた。
『どうした? 『杏子様』ともあろう者がだいぶ
「いま私はネル・フィードの力をどのぐらい扱えるようになってるの?」
『30%、といったところか』
「私、ストレス溜まり過ぎて頭がおかしくなってきたかもしんない」
『いいじゃないか、やりたいようにやれば。その為に私と契約したのだろう?』
ネル・フィードのなにげないそのひと言が、私の『心の天秤』をゆっくりと暗闇へ傾けた。
「藤花の頭の中を私でいっぱいにしてあげる。そして、この世界は藤花の理想郷になるんだよ。私のこともっともっと、だーい好きになっちゃうんだから。あはははッ!」
私はこの日、決めたんだ。
百合島杏子は『残酷神ネル・フィード』になると。
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