第134話 始まり

 ドロドロッ! ドロドロォッ!


 腐神の頂点、残酷神ネル・フィードが、天井から目の前に降りてきた。やっぱり目の前にするとキモい。


( こ、これを飲み込むんだったよね。なかなかエグいなぁ……)


『では、杏子! その体、頂くぞっ!』


「はいっ! お願いしますっ!」



 ベチャアッ!!


 ドクドクドクゥッ!!


「おあごごごごぉおっ!!」

(く、苦しいっ!! 普通に死ぬっ!)














 ゴックンッ!















 残酷神ネル・フィードを、私はすべて飲み干した。これで私は藤花を傷つける全てを破壊できるっ! 藤花の神様になれるんだぁ♡



『杏子よ。お前のその願いは叶わないぞ』


「な、なんでっ!?」


『私がしたいのはそんなちっぽけな事ではない。まずは大量殺人犯として人間の臓物で遊ばせてもらう。はあっ、はあっ、久しぶりに血の味、肉の味を堪能できるぞっ!』


「な、なによそれっ!!」


『もう暫くすれば、お前の脳は完全に私に支配される。まだ力が戻りきっていないとはいえ、ガキを完全支配する事は容易いだろう』


「……うそっ!?」

( 完全に支配っ!? 本に書いてあったのと少し違うっ! 私は藤花の為に力を使いたいのにっ!)

















 10分後






『ど、どういう事だ? これは?』


「私は百合島杏子。12歳。好きな人、黒宮藤花。全然支配されてなくない?」


『な、なぜだっ!? んなバカなっ!! んっ? なにかを感じる……私の完全支配が妨げられている?』


「妨げ? なになに?」


『げっ! なんだっ!? お前の身につけているその石っ! やたらとカテゴリーの高いエネルギーを感じる! バカなっ!?』


「へえ……この方舟水晶がねー。これ付けてれば完全に支配する事はできないんだあー。へえー」


『しまった!! 余計な事を言ってしまった!! えーいっ!! 契約は無効だっ!! 離脱させてもらうっ!』





















「逃すかよっ!! ばーかっ!!」














 ググググゥゥッ!!






『うぎゃああっ!!』



「すげーっ! まさか『詐欺宗教』と思ってた永遠の方舟のネックレスに、そんな力があったなんてっ!」


『こ、こんな事があるのか、あっていいのか……?』


「もう、あんたの力は私のものなんだからっ! いい? 協力して!』


『ふっ、まったく。お前という奴は。ちなみに断ったら? どうなる?』


「あんたの力だけ吸い取って、精神は破壊する。この方舟水晶があればできない事じゃなさそう。感覚で分かる」


『あーはっはっはっ! できるだろうなっ! 私にも分かるっ! さあっ! 消せっ! 私の力が欲しいのだろうっ! 邪魔な私は消せばいいっ!』








「……消さない」







『ん?』


「消さないよ。ネル・フィード」


『な、なんだとぉっ!?』


「ここに来てくれて、私を選んでくれて、ホントに、ホントに嬉しかったんだもん。2年間ずっと待ってたんだもん……」


『お前……』


「ネル・フィードがしたい事、全部はできないと思う。でも、何万年も傷つき彷徨っていたんだもんね。それをここで消し去るなんて、私にはできないよ」


『くっ! あはははっ!』


「な、なによっ!! 殺すわよっ!」


『おいおいっ! 一瞬で考えを変えるなよっ! 本当に変わった奴だっ! ある意味、残酷神になるのに相応しいのかも知れんな。百合島杏子』


「そうよ! 私は相応しいのよ!」


『分かった。私の力、お前にくれてやるっ! だが、完全に残酷神になるとその姿、変貌するぞ。いいのか?』


「この可愛さはなくしたくないんですけどー!」


『分かった。では少しずつだな。じわり、じわりだ……』


「おっけー! とりあえずは藤花をいじめた加江ってやつをさ、とっちめたいってわけっ!」


『ガキの喧嘩か。いいだろう。任せろ』


 こうして私は残酷神ネル・フィードを飼う生活をスタートした。

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