第133話 コンタクト

(キタコレッ! キタコレッ! 残酷神キタコレッ──────!!)


 苦節2年。私はがんばったよ。頭が良くて、運動神経もいい方が腐神も契約したがると思ってさ、勉強も運動もガンガンしてさ。今やどちらも学年トップレベル。


 藤花もそんな私に最近、すごく憧れてくれてるみたいだしぃ♡ 一石二鳥ってやつ? 藤花の為なら私はなんだってがんばっちゃうんだよねぇ〜。はぁ、藤花ぁ♡




 おい!







 おいっ!






『おいっ!! 聞こえてるのか?』


「はいっ! 聞こえてます!」

(おっとっと、ヤバっ!)


『ほう、驚かんな。やはり腐神の存在を信じ、崇拝する者のようだな』


「はいっ! もちろんです!」


『たいしたガキだ。野望のデカさも申し分ない。お前、見た目よりもヤバい奴なのか?』


「かーもしれません」


『お前、アドルフ・ヒトラーを知っているか?』


「知ってます。なかなかその人もヤヴァい方でしたよね?」


『あの男よりも、お前の方がヤバい臭いがプンプンするんだが……』


「ええー!?」

(ヒトラーよりヤバい? 私が? 残酷神が言うんだから間違いない! やったねー!)


『だからつい、ガキのお前にコンタクトを取ってしまったのだ。本来ならありえんのだが……』


「あの、あなたは残酷神ネル・フィード様で間違いないのですか?」


『その通りだ。ここ数百年でようやく行動できるまでに回復した』


「観測者のエネルギー砲で、かなりの深傷ふかでを負ったのですね?」


『観測者? エネルギー砲? なんだそれは?』


「えっ? いえ、なんでも……」

(知らないんだ。まぁ、知ってたらそこまでの破壊行為はしないはず。自分も含め、無にされてしまうんだからね)


『観測者か。私には消えた記憶があるようだな。ミューバでの傍若無人、監視されていたのか。それで吹っ飛ばされて……』


「だから、あんまり無茶苦茶すると、観測者に世界ごとリセットされてしまうんです」


『では長く楽しむには少しずつ、ジワジワと、がいいわけか?』


「だと思いますー!」


『お前、よく教えてくれたな』


「私、すぐに消されるわけにはいかないんで」


『あーはっは! ガキ! 気に入ったぞ! 契約を交わそうではないか!)


「ありがたき幸せ!」


『肝も座ってやがる。名は?』


「百合島杏子です」


『杏子か……』


「あの、私もひとつ、聞いてもいいですか?」


『なんだ? 杏子よ』


「あなたの『ネル・フィード』という名前、なんなのかと思って」


『ネル・フィードが気になるのか?』


「ええ。他の腐神にはそんな『人のような名前』はついてないはず。だからめずらしいなと思いまして」


『たいした理由はないのだ。今の『ひとつ前の世界』で、私はある男と契約を交わし、世界を滅亡させた』


「存じあげております」


『アドルフ・ヒトラーや杏子、お前らよりもさらに残酷な男だった。その男の名が『アークマーダー・ネル・フィード』だった』


「そうだったんですね」


『奴との時間が私はとても気に入ってな。完全に奴を乗っ取った後も、『残酷神ネル・フィード』と名乗ることにしたのだ』


「でも残酷神ネル・フィードという名が『今の世界』に現れたのはかなり昔。その頃あなたはまだ動けなかったはずですよね?」


『確かにな』


「ほんの数十年前、ヒトラーが初めての接触にも関わらず、そんな大昔からあなたの名が世に出回っていたのが不思議だったんです」


『簡単なことだ。私のことを今の世に広めたのは、他の腐神どもだ。契約の際、背後に大きな存在をチラつかせて、自分をより大きく、恐ろしく見せたかったのだろう。私は腐神界では有名だからな。道具として使われてしまっていたわけだ』


「なるほど。『虎の威を借る狐』的なことね。ふむふむ」


『この先、残酷神ユリシマ・アンコと名乗りたくなるようにしてほしいものだ! あはははッ!』


「ダサいんでやめた方が……」


『杏子! では、契約といこうか』


「はい!」


 ドロドロッ! ドロォッ!!


 私の部屋の天井に臭くてドロドロの物が現れた。これが本で読んだ腐った精神生命体『腐神』!


( ついに来たんだ。私は神になる。この世を思い通りにできるんだ! きゃっほー♡)

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