第132話 残酷神 ネル・フィード

 腐神とのコンタクトは困難を極める。腐神は精神生命体。我々人類とは存在仕様が大幅に異なるからだ。


 地球は広い宇宙に点在する『文明を有する星』の中で最もレベルが低いんだ。8つに分けられた中で8番目。地球……だるいわけだよ。


 地球は宇宙全体から『ミューバ』とか『ミューダ』とか、そんな呼ばれ方をされている。


 『ゴミ』なんだって。ウケる。


 そのゴミの惑星『地球』に腐神は不思議と集まるんだって。この世界に災いをもたらす為に。


 過去に起きた大きな戦争やパンデミック。自然災害。その名を歴史に刻むような大量殺人犯。その中のいくつかには腐神が関係してたみたい。


 でもそれは腐神が悪いというより、レベルの低い人間の持つ、悪の心が問題なわけで。


 私は自信がある。腐神に心を支配される事なく、その力を得る事に。


 腐神は人間の『野望』や『絶望』の臭いに引き寄せられる。それに加え、腐神の存在を認知し、崇拝する者には近づきやすいのだという。


 この1年、ずっと腐神の存在を信じ、感じる努力を重ね、崇拝してきた。なのに全然ダメだ。


 私は残酷神ネル・フィードとのコンタクトを切望していた。


 何故か?


 本によると、頂点に君臨していた残酷神も、現在はひどく弱りきっているらしい。


 過去に『ある人物』と契約を果たし、大きな戦争を起こした残酷神は、世界をほぼ壊滅させた。


 それを見た観測者『アンキテラ』は地球を無の状態にする事に決定した。その際の強力なエネルギー砲により、残酷神も消された。


 地球は空白の時間に突入。


 再び、微生物、無脊椎動物、両生類、哺乳類、猿人? どこからかは分からないけど、そんな『進化の歴史』を、私たちはやり直す羽目になったみたい。


 でも、残酷神は消えてなかった。小さく、弱くなりながらも、宇宙を彷徨っていたんだと。本にはそう書かれていた。


 『アドルフ・ヒトラー』


 残酷神は1度、力を試す為にその男と仮契約を交わした。程なくして残酷神は男の体を出て、再び『腐神界』と呼ばれる宇宙空間へと戻っていったらしい。まだ力が戻りきっていないと感じたからみたい。


 1度は地上に降り立った腐神。1番コンタクトが取りやすいに決まってる! 私にその力をよこしなさいよっ! 藤花を傷つける全てから、私が守ってあげるのっ! そして、私だけの藤花にするの♡


 

 そして、腐神とのコンタクトが実現できないまま、さらに1年が過ぎ、私は小学6年生。12歳になった。


 そして、藤花がいじめられた。


 藤花の大事な永遠の方舟をけなす、不届き者が現れた。許せんッ! 今日こそは残酷神との契約を果たしてみせるッ!


 加江昴瑠への怒りが、私の野望に火を付けたっ!! その激しく、焦げついた臭いにようやく、残酷神ネル・フィードが私に興味を持ってくれた!






『おい、貴様……!』













(キタコレッ──────!!!!)

 

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