第128話 降臨 牙皇子狂魔
フロッグマンは永遠の方舟の信者。その嘘の様な真実に、その場の空気が一気に凍りつく。
ジャラ……
『俺が腐神と契約しても人間の時の記憶をなくさず、平然と話せるのも、これのおかげだしな。ゲロッ!』
フロッグマンがズボンのポケットから出したのは、紛れもなく方舟水晶のネックレス。
『俺が永遠の方舟に入信したのはこれが欲しかっただけで、他に理由はなかったんだけどな。ゲロッ!』
「腐神になっても、人間の時の記憶を持ち続ける為に?」
『まあな。この水晶には不思議な力があるって聞いたんだ。ゲロッ!』
「だ、誰にっ?」
『そりゃあ、牙皇子様に決まってるだろぉ! ゲロゲロッ!』
『方舟水晶』
教祖、弥勒院はぐれが用いたその石は、アンティキティラの力による、思考の変化をも妨げた。
それが腐神と同化した際の『自我の消失』さえも防いでいたのだと言う。
『俺が腐神『
「じゃあ、最近まで人間の姿で過ごしていたってこと?」
『その通り。2年前は仮契約。腐神を食ったその後は共同生活さ。ゲロゲロッ!』
「教祖様が言ってた通りじゃん! 牙皇子は5年間、こいつも2年間? うええっ!」
5年前に牙皇子、2年前にはフロッグマン。既に腐神が降臨していたのだ。方舟水晶の力で姿が変わる事もなく、意識を乗っ取られる事もなく。
『牙皇子様の命令で本契約をし、この姿になったのは10日前。その後はご存知の通り、俺は人間を食い殺していった。ゲッロォ!』
「で、足を失った仕返しにでも来たって言うの? 私の大事な人の命を奪って気は済んだわけっ!? ふざけないでよっ!!」
『黒宮、お前は大きな勘違いをしている。ゲロッ!』
「か、勘違い? 何がよっ!!」
フロッグマンは溜息をついた。
『お前、本気で永遠の方舟のせいで俺が事故にあって足を失った……なんて思ってるんじゃないだろうな? もしそうならイタすぎるぞ。ゲロゲロッ!』
「そ、それは……」
フロッグマンの言う通りだと藤花は思った。永遠の方舟は弥勒院はぐれのお遊び。ネックレス以外に特別な何かはない。
小学生の頃、確かに加江の執拗な方舟様いじりに腹を立て、彼への天罰を願った。
2日後、彼は事故に遭い両足を切断。自分の願いが届いたのだと、当時の藤花は信仰の力に身も心も震えた。
『よく聞け、黒宮。俺が事故に遭ったのはな、『残酷神の力』によるものだ。ゲロゲロッ!』
「ざ、残酷神っ!? 牙皇子っ!?」
『だから黒宮を恨んだり、仕返ししてやろうとか、そんな事、1ミリも考えちゃいない。ゲロゲロッ!』
フロッグマンの話。確かに驚きは多いものの、いまいち掴み所がない。藤花が軽い苛立ちを覚えた、その時だった。
グアゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「な、なにあれっ!?」
「空がっ……!」
「あ、あれは……く、空間が裂けてるのよッ!!」
次元を引き裂いて現れた
『牙皇子狂魔』
ついに、本人がブラック・ナイチンゲールの前にその姿を現したっ!
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