第127話 フロッグマンの正体

『ゲロッ! やっぱり黒宮で間違いないのか。ゲロゲロ』


 腐神フロッグマンの唐突な発声とその内容に、3人はおぞましさの中、立ち尽くすしかなかった。


「カエル野郎は藤花の知り合い? 私のめーぷるちゃんみたいな事?」


「ちょっと話が違くない? 藤花っ! 本当に心当たりはないのっ?」


「……ないです」


『ゲロゲロッ! 分かるわけないさ。だが、俺は分かった。見た目が随分変わってて気づくのに時間がかかったが声で分かった。まさかお前がブラック・ナイチンゲールにいるとはっ! 意外過ぎだよっ!』


「随分と親しげに話してくれるのね。ねえ、あんた誰なの!? 本当に私の知ってる人なの?」


『赤髪が黒宮って。ゲロゲロっ!』


「笑ってないで答えろっ!!」


 藤花は、何かが根底から覆ってしまうような嫌な感覚に襲われていた。


『言ったら、思い出してくれるかなぁ? ゲロッ!』


「記憶力には自信がある。言って」


 フロッグマンは腰に手を当てて、うつむきながら頭を左右に振った。


『ゲロゲロッ! 分かったよ。教えてやる。俺が誰なのか。そして、なぜ腐神として今、ここにいるのか。頃合いだ……!』


 ドックン! ドックン!


 3人共、心拍数の上昇を抑える事はできなかった。


『よーく聞けっ! 俺の人間の時の名前は『加江かえ昴瑠すばる』っ! お前と同じ小学校に通っていたっ!』


「かっ! 加江君っ!? 嘘っ!!」


 藤花は知っていたっ! 覚えていたっ! その名前っ! その人物っ!


『へえっ! 覚えててくれたんだな。完全に嫌われてたからなぁ。記憶も末梢されてると思ってたぜ、黒宮。なあっ!! っ!!』


「あっ、ああっ! あっ……」



 藤花は、手足の震えが止まらない。


























「方舟菌っ!!」












「方舟様はうんこするのか?」















「方舟様は金儲けが趣味なんだろ?」







 あなたは覚えていただろうか?


 第2話『黒宮藤花』に出ていた方舟様いじりをしていた彼の事をッ!



 それでは、第2話のVTRをご覧ください。どーぞ!







 第2話『黒宮藤花』より


「おい! 黒宮! なんでお前だけ給食じゃないんだよ!」


「えっ? これは方舟様のお米とお野菜だよ。私はこれしか食べちゃいけないんだ。そういう決まりなの。天に昇る為だから……」


「天に昇る? なんだ? 方舟様って。きしょ! 宗教か? 変わってんなぁ」


「信仰の自由、知らないの?」


「こないだニュースでやってたよなぁ。変な宗教信じてる奴らが悪い事して警察に捕まってたの」


「やめて。そんなインチキな宗教と方舟様を一緒にしないでっ!」


「ふん! 一緒だって! どうせ、その弁当の中にも変なものが入ってんだぜ! 方舟菌だぁ!」


「やめてよっ!! 方舟様を侮辱しないでくれる!? 許さないからっ!」


「そこ! 喧嘩しない!」


 担任の教師が注意してその場は収まった。


 だが、その後も教師のいないところで、その男子生徒による藤花に対する「方舟様いじり」は続いていた。


「お〜い! 方舟菌!」


「方舟様はうんこするのか?」


「方舟様は金儲けが趣味なんだろ?」


 さすがに温厚な藤花も限界が近づいていた。














 はい。こんな事があったんですね。さすがに第2話の事なんて覚えていないですよね?


 VTRを見て、思い出してもらえました? 思い出しましたよね?


 それでは続きをご覧下さい。












「な、なんで加江君が腐神に!?」


 フロッグマンの正体。それは5年前、小学6年の時に藤花の信仰する永遠の方舟をバカにした男子っ! 加江昴瑠だった!


『だいぶ馬鹿にしてたからなぁ、方舟様。おかげでバチが当たって交通事故……両足切断だぜ? 最悪っ。ゲロッ!』


























「あの男子に天罰を与えて下さい。私はもう我慢できません。許せません。方舟様をあんなにバカにするなんて……」



 藤花は第2話でこんな事も方舟様にお願いしちゃってたんですね。























「あっ、ああっ……」


『本当に後悔した。永遠の方舟を馬鹿にして、両足を失い車椅子生活。大好きなサッカーもできなくなってさ。僕ちゃん塞ぎ込んだよぉ……』


「そ、そう……」


『俺は事故から3年後。ある人に勧められて永遠の方舟に入信した』


「なっ!!」


「ま、まじでっ?」


「ぴょん吉が永遠の方舟の信者っ!? びっくりこきまろだわ……」


 フロッグマンの語る恐るべき真実は、この後さらに続く。

 

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