第116話 天滅丸

 陣平たちがエクレアと戦う一方、斬咲と藤花は静かに闘気を纏いながら睨み合っていた。


『赤髪さん、随分と髪を短くされて、イメージチェンジ? 素敵です♡』


「うるさい。お前を殺すのに邪魔と判断した。それだけ……」


『あっ、そうだったんだー♡』


 藤花は、チラリと陣平とエクレアの戦いに目を向ける。陣平流と邪拳・ぬえとの激闘が目に飛び込んできた。


『気になっちゃいます? 鵺の使い手が腐神の力も得た。それがエクレアさんなんです。ゼロワールドの中でも実力はトップクラス。あなた方に待っているのは確実な死だけなのよ♡』


 ボボォオォウッ!

 ギュアァァアアッ!


「陣平流は負けないっ! アンタのその刀にもねッ!」


 藤花は変幻自在の剣を放出ッ!


『キリリッ! 今日は遠慮なく抜いちゃうよっ!  天滅丸てんめつまるカモーンっ♡』


 シュキャ───────ンッ!


 斬咲の血吸い刀・天滅丸が、耳障りな抜刀音と共に不気味な輝きを帯び、鞘からその姿を現した。


「あんたを倒して牙皇子を引きずり出すからっ!」


 シュボォウッ! ゴオウッ!


 藤花の、剣の炎が勢いを増したっ!


『あの方を気安く呼んじゃダメダメ。次元が違うんだから♡』


「あっそ。じゃあ昨日の続きをさ、始めようよ」


『キリリッ! いつでもどうぞー♡」


 カチャリ!


 斬咲は、天滅丸の刃先を藤花に向け構えた。それに対し、藤花は剣を上段に構え、一気に斬りかかったッ!


「陣平流ッ! 十字飛車じゅうじびしゃッ!!」

 

 ギュアアアッ!!


『剣技ッ!?』


 紫炎の十字の斬撃が斬咲を襲うッ!


 ブオォンッ!! バオオウッ!!


 ガキーンッ! 


  キィンッ!


   シュボォォウゥッ!!


 藤花の太刀筋の鋭さに、慌てて天滅丸で防御する斬咲ッ!


「よく十字飛車を初見で食い止めたね。一気に殺っちゃうつもりだったのにさ……!」


 ギギギギ……ッ!


 紫炎の剣と天滅丸の鍔迫つばぜり合いは互角。


『あんな達人クラスの剣技まで使いこなせるのっ? びっくりーっ!』


 バッ!      

    

    スタッ!


 藤花は斬咲と再び、5メートルの距離を取った。


「次はそう簡単には防げないから」


『ドキドキしちゃう♡』


 シュボウッ!! ゴオウッ!!


『陣平流ッ! 矢倉やぐらくずしッ!!』


 ドォーンッ!!


 藤花の連続斬撃ッ!!


 ギュアンッ! ギュアンッ!


 ズバッ! ズバッ! ボォウッ!


 シュボォォッ!! ズギャアンッ!


 シュンッ! ババッ!


 斬咲は、それを全てギリギリでかわすッ!


『昨日と全然違うっ! すごーい♡』


「あれも全部かわすとか、生意気!」


『じゃあ、こっちからもいこっかなっ!』


「来なよ。来てみなよっ!」


『じゃあ、いっくよーっ♡』


 カチャリッ! ズオオオッ!


 斬咲が必殺の構えッ!!


「はあっ!!」


 ボボォンッ!! ブアオッ!


 それに対し、藤花も剣の炎の勢いをさらに上げ、構えるッ! 


死死噴神ししふんじんーッ!』


 ドーンッ!!


 斬咲の斬撃が、藤花を強襲するっ!


 シュキャンッ! シュキャアンッ!


 シュキャンッ! シュキャンッ!!


 ズバッ!! 


 ブシュウッ!!


「つッ!」


 藤花の右上腕部を天滅丸が斬き裂いたッ! 傷は浅いが、危うく右腕を切り落とされるところだった。


『惜っしいっ! もう少しだったのにーっ!』


「あんたの太刀筋、いいになるよッ!」


『本当っ? じゃあ、引き続きお勉強の時間ねっ! さっきの石像みたいに真っ二つの刑にしてあげる♡』


「さっきの……!? 刀神像っ?」



 バンッ!!



 斬咲が、天高く舞い上がったッ!


『酷死無双──ッ!!!』


 グアアアアア─────ッ!!


 凄まじい轟音と共に刀が振り下ろされたッ!!


「うおおおおおっー!!」


 ガキーンッ! ボオオウッ!


 ドォォォオ──────ンッ!!


 バチバチッ!!


 藤花は命の炎全開で、斬咲必殺の酷死無双を受け止めたッ!


『んもうっ! その炎の剣うざっ! どこまで強度上がるのっ?』


 ギギッ!


 ギリギリギリギリギリッ!!


「驚くのは、まだ早いんだってば」


『な、なにっ!?』


「だあああッー!!」


 キィ──────ンッ!!


 藤花は、受け止めた天滅丸を思い切り弾き飛ばしたっ! その勢いで斬咲の両腕が上がり、胴体は正にガラ空き状態っ!


『し、しまっ……ッ!!』


 とはいえ、剣を構え直す暇はないっ! 瞬時に、藤花は打撃を叩き込む判断を下すっ!


「朱雀ッー!!」


 ズッド────ンッ!


『おっげえっー!!』


 藤花の渾身の蹴りが、斬咲の土手っ腹にクリティカルヒットッ!!


 ビシャアッ!!


 斬咲は、たまらず嘔吐した。


『はあっ! はあっ! なにっ、その馬鹿力っ? いったいなぁ……』


「意外ともろいね。蹴りや拳が当たれば、難なく倒せる」


『そ、それはどっかなー? ねえ? 天滅丸……」


 藤花は、地面に転がった刀に話しかける斬咲の姿を見て、追い詰められておかしくなったのかと思った。しかし、一瞬でその思考は排除した。


「その刀っ! 生きてるっ?」


『赤髪さん、鋭いっ♡』


 バキーンッ!


 天滅丸が勝手に起き上がり、自立。不気味なオーラを放ち始めた。


 ズオオオオオオ……

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