第17章 万死一生

第113話 刀と稲妻

 N県の刀雷寺には新幹線でKT府に行き、そこから銀南ぎんなん線に乗り換え、4駅目の銀南N駅で下車。バスは運行しておらず、ここからは徒歩で刀雷寺を目指す事になる。


 藤花は辺りを見回し、驚いた。


「こんなに閑散としたN県、見たことない……」


 N県は言わずと知れた観光名所。大仏で有名な刀雷寺を始め、野生のオカピが生息する無花なか公園。文豪、美島みしま雪子ゆきこの記念館など、年間3500万人が訪れる。


 だが、今目の前に広がる景色に人影はない。腐神が2体同時にやって来るのだから無理もない。


 蝉の鳴き声すらあまり聞こえない中を、警戒しながら歩いてい行く。20分程で見えてきたのは大きな刀雷寺の門。通称『断罪門』。


 その断罪門の左右の大きな柱の前には、高さ5メートルの石像がある。台座と合わせると6メートルを超える。


 左の柱の前には『刀神とうしん


 右の柱の前には『雷神らいじん


 ずうーん!


「やっぱり凄い迫力。この門を潜ればその先に、腐神が……」


 イバラがそう言いながら、刀神、雷神像を見上げた瞬間。


 スタッ!


   スタッ!


「き、斬咲っ!!」


「本当に2匹で来たーっ!」


「ぱっと見はどちらもかわいいお姉ちゃんなんじゃがのう。殺すのもったいないぐらいじゃ」


「エロジジイっ! そんな事言ってちゃだめっ!」


「ついに出たわね。腐った神!」


 腐神 斬咲は、刀神像の頭上に。腐神 エクレアは雷神像の頭上に降り立つ。


「罰当たり。さっさとそこから降りた方がいい……」


 藤花は静かに怒りを込め言った。


『私達より上の存在はいないの。故に罰当たりなのは私達を見下ろすこの石像ちゃんの方。ねっ? エクレアさん』


that'sザッツ rightライト……! 破壊に決まりだ!』


 そういうと、2体の腐神は軽く宙に浮き、斬咲は天滅丸を鞘から抜いたッ!


酷死無双こくしむそうっ!』


 ズバゴォッ──────ンッッ!!


「うわぁーっ! 石像をぶっ壊すとかっ! ありえなーいっ!」


「激しく激しいっー!!」


 刀神像は、縦に真っ二つに割れて砕けたっ!


『じゃあ、こちらも……』


 握った拳にバリバリと音を立てて電撃がほとばしる。エクレアは、その拳を雷神像の頭に静かにのせた。


Thunderサンダー blastブラストッ!!』



 ズバババババババァァアッッ!!



 石像が稲光に包まれたっ!!


















 ドガォォォ───────ッン!!






 ボォオォオオッウッ!!



 全員、命の炎で全身を覆い、激しく砕けた石像の破片の直撃から身を守るっ!



「許せないっ! 貴重な文化財をっ!」


 怒りの藤花をよそに、腐神は薄ら笑いを浮かべ、光のない目でブラック・ナイチンゲールを見下ろす。


『さあっ! この断罪門を潜って中に入って来て下さいね♡ 私たち腐神に盾突いた罪は大きいんですから。キリリッ!』


『キャハアッ! Guiltyギルティ……!』



 シュンッ!


   ビシュンッ!



 2体の腐神は腐臭と香水の混ざった香りを残し、刀雷寺の境内へと飛んで行った。


「行くよっ! みんなっ!」


 藤花を先頭に、ブラック・ナイチンゲールも断罪門を潜るっ!


 死闘が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る