第108話 いい乳

 時刻は18時になろうとしていた。そろそろ夕方のニュースが始まる。皆、和室に集まり、牙皇子がなにを語るのかテレビに集中していた。


「さあ、今日はなんなのー?」


「あっ、始まったよ」













『みなさん こんばんは。ニュースeveryです。まずはゼロワールドの動画が先ほど公開されました。ご覧ください』









 画面にうつむき加減の髑髏の仮面、牙皇子狂魔が映った。


『どうも。ゼロワールド教祖、牙皇子狂魔です』


「いつも通り、仲間がやられたのに、平然としてるね」


 イバラがそう言った瞬間だった。


『なんかさぁ、ムカつくんだよね。ムカつく。ムカつく。あっー! ムッカつくー!!』


「あら? 牙皇子ちゃんおこね」


「今日のあのきもきもロボで決めるつもりだったんじゃない? 強かったのは確かだし」


「あの腐神、私が仕留めたかったのに斬咲に邪魔されたし」


「とどめは激しくエーデルシュタインだったし」


『まさか、あの魔亞苦・痛をもってしても殲滅せんめつできないとは。正直言って驚いていますよ。ブラック・ナイチンゲールのみなさん、本当にお強いのですね』


「牙皇子、明日はどこで戦うわけ?」


『だが、明日が貴様らの命日となるのは間違いない。この世はのみが生き残る! 他は皆殺しなのだ!』


「また言ってる。なんなの?」

(ゼロワールドの中に永遠の方舟の信者。可能性は高い……)


『ブラック・ナイチンゲール。貴様らの墓場となるのはN県、刀雷寺とうらいじ! 大仏に看取られながら死ぬがいい』


「刀雷寺っ? 私は修学旅行以来だなー。藤花は?」


「…………」


「どうしたんじゃ? クロちゃん、顔色が悪いのう」


 陣平の言うように、藤花の顔色がみるみる悪くなっていった。


「はあ、はあ……なんなのよ」


「藤花さん、どうしたの?」


「藤花?」


「だ、大丈夫……」


 藤花はここまで牙皇子が指定してくる腐神との対決の舞台に、ひとつの共通点があることに気づき、狼狽うろたえていたのだった。


『B県K市、アフロタワー』


『TK都、永遠の方舟本部』


『N県、刀雷寺』


 永遠の方舟本部はもちろんのこと、実はあとの2箇所も藤花にとって大切な『思い出』の場所だったのだ。


(3箇所連続? 偶然なの? やめてほしい、気持ち悪い……)


『明日の15時。刀雷寺に2体の腐神を送り込む。1人は貴様らもよく知っている斬咲だ。綺麗に解剖してもらうといいだろう』


「今度こそ2体同時に来るのね!」


「私の命の炎が活躍しない展開を激しくキボンヌ」


「今日はの完全回復に助けられたもんね。だからって頼ってちゃダメよね」


「激しくそうだよっ」

(西岡さん私のことを美咲って言ったよね? いつもなのに)


『あり得ないことだが、もし、その2人を倒そうものなら、次は私が直々に貴様らを血祭りにあげてやる。覚悟しておくがいい!』


「牙皇子が!? もう?」


「ラスボスが早くも登場ってわけ? マジでーっ?」


「これは明日、絶対に勝たなきゃね。牙皇子ちゃんに早く会ってみたいもんね。私がぶっ倒してやるわ」


「おおっ?」

(西岡さん、気合い入ってるう!)


 美咲もイバラも真珠の微妙な変化に気がついた。もちろん、陣平も。


「ふうむ」

(西岡さんや。あんたひと皮剥けたのう。ワシには分かる。なにかを吹っ切ったしとるわい。プルプル感が増しとる! ぶはぁっ♡)




『では、明日、刀雷寺に15時。待っているぞ! ブラック・ナイチンゲールッ!』




 明日の腐神との戦い。その地はN県、刀雷寺。そこで西岡真珠の力はついに爆発する!

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