第97話 カテゴリー

「まずはあなた方、ブラック・ナイチンゲールのことから聞かせてもらってもよろしいですか?」


 永遠の方舟教祖、弥勒院はぐれは美しい銀髪をかき上げながら言った。


「私たちのことですか?」


「その並外れた力をどのように手に入れたのか。そこを詳しく知りたいのです」


 藤花は他の4人と目を合わせた。皆、『藤花に任せる』といった表情だった。


「教祖様、私たちのこの力の秘密をお話します。いいですか?」


「お願いします」


 藤花は右手を見つめながら語り出した。


「私たちブラック・ナイチンゲールのこの力は、アンティキティラという異星人から授かったものです」


「アンティキティラ?」


「これ以上はまだ話せません」


「それは間違いありませんね?」


「信じられないかも知れないですけど、本当の話です」


「アンティキティラ。やはりそうですか。安心しました」


「教祖様はアンティキティラをご存じなのですか?」


「ええ。私も元々この星の住人ではありませんので」


「教祖様がっ? 本当ですかっ!?」


「うええっ!?」


「わお♡ 宇宙人♡」


「た、たまげたわい!」


「さっきの犬みたら、激しく頷ける気もするけど」


 すっ


 弥勒院はぐれが目からカラコンを外すと、美しい黄金の瞳が現れた。


「これで信じてもらえましたか?」


「は、はい!」

(教祖様が異星人だったなんて! も、萌えるっ♡)


 弥勒院はぐれは再びカラコンを装着。皆、彼女がしようしている話に興味津々だ。


「今から私が話す内容に、あまりショックを受けないで下さいね。よろしいですか?」


 5人とも言葉なく頷いた。


 それを見て、はぐれは語り始めた。


「まずは宇宙のお話からしましょう。この広い宇宙には1000の種族が存在しています」


「そんなにいるのね。宇宙人て♡」


「さらに、その種族は文明の成熟度によって8つのカテゴリーに分けられているのです」


「8つのカテゴリーじゃと?」


「私の生まれたガルトッドや、あなた方に力を与えたアンティキティラは上から2番目のカテゴリー2ツーに属しています」


「すごい。教祖様はカテゴリー2なのですね。ちなみに私たち地球人のカテゴリーって……」


「気になりますか?」


「激しく気になる……けど」


 5人とも嫌な予感がした。


「この星、及び、ここに住む人類はカテゴリー8エイト。最も低いレベルの種族になります」


「やはりそうじゃったかっ!」


「入院中のエロジジイの話、全くのデタラメって訳じゃなかったんだ。やっぱり地球人は激しく罪人……」


 弥勒院はぐれは空を見上げた。


「『ミューバ』宇宙全体からこの星はそう呼ばれているのです」


「ミューバ? なんかカッコよくなーいっ? あははっ!」


 イバラの無邪気な笑顔を見て、はぐれは少し切ない顔になった。


「すみません。ミューバをこの星の言葉に訳すと『ゴミ』なのです」


「ぶっ!! ゴ、ゴミーっ!?」


「そうです。この星を含めミューバは16個、この宇宙に存在しています」


「1000分の16? それに我らが宇宙船地球号が入っちゃってるってことー?」


「つらたんだわ……」


 嘆くイバラと真珠。はぐれはさらに続ける。


「さらに、ミューバはカテゴリーの高い種族の遊び場になってしまっているのです」


「地球がゴミで遊び場。教祖様、それが真実なのですね?」


 藤花は少し震えた声で尋ねた。


「世界に点在する神という存在。それは未熟な人類を導く為に必要だったと思います。ですが、歴史的に見ても多すぎるとは思いませんか?」


「確かに、世界中、特に日本はおかしいぐらいにたくさんの宗教で溢れて……」


「神など、ひとりいれば十分。それで本来の役目は果たせたのです」


 陣平がめずらしく真剣な表情で話し出した。


「いわゆる、統制の取れた秩序ある社会を形成する為の『聖なる存在』といったとこじゃな?」


「ええ。多すぎる神はただ単にこの世界に混乱をもたらしたに過ぎません。はっきり言って不要なもの」


「確かに多すぎる宗教は火種となり、過去に限らず現在も、戦争を引き起こす原因になっておるからのう」


「その通りです。高カテゴリーの種族たちが神になりきって人々の信仰心を弄んだ。その結果なのです」


「神の存在が、まさかそんな下等なものだったなんて……」

(この流れ、嫌な予感しかしないんですけど。永遠の方舟って一体……)


 弥勒院はぐれの金色の目は、嘘を語る者の目ではなかった。

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