第91話 火葬

 永遠の方舟本部での腐神、魔亞苦・痛との戦いが終わった。ブラック・ナイチンゲールは、美咲の虹色の命の炎による『完全回復』のお陰で死なずに済んだ。


 だが、藤花の母は無惨にも腐神の攻撃を受け即死。メンバーは俯き、声を発する事ができなかった。



「お母様……」



 藤花は、本部正面玄関に横たわる母に近づいて行った。そして、しゃがんで手を握って話しかけた。


「お母様、痛かったでしょう。なんで出てきたの? 私が外にいると感じたの?」


 頭部のない母親に話しかける藤花の姿に、全員が涙した。


「私の方こそごめんなさい。方舟様の神棚を壊してしまって。お母様の大事な、大切な……」


 藤花の瞳から、大粒の涙が幾つも頬を伝い、母の遺体にこぼれ落ちた。


 腐神ヘドロを倒した後、自宅に両親の安否を確認しに行った時にあった手紙。あの時に藤花が感じていた胸の引っかかり、それが今ハッキリと分かった。




『あの手紙は、ゼロワールドが私をおびき出す為にお母様にに書かせたのではないのか?』



『黒宮藤花』を『永遠の方舟本部』へと。


 広いV県、その中のW市。そして夜羽女町、黒宮家。近所の家も襲われていた形跡はあった。とはいえ、ピンポイントで自分の家が襲われていた事に違和感があった。


『ゼロワールドは黒宮藤花自分を知っているのではないか?』


 そんな事も思ったのだ。



(あの手紙、筆跡からしてお母様なのは間違いなかった。私がブラック・ナイチンゲール入りせずに、あの手紙を読んでいたら、すぐ永遠の方舟本部ここに来ていたはず……)



(もし、来ていたら? 何があったというの? 更にその永遠の方舟本部に邪魔者である私たちも呼び寄せた。それは何故?)



(ゼロワールド、永遠の方舟、そして私 、黒宮藤花。ダメだ、分かんないっ! 牙皇子狂魔がしようとしている、人類滅亡の裏にある何かがっ!)



「お母様。安らかに眠って……」



ボォォォォォォ…………



 藤花は、自らの命の炎で母を火葬した。周りに飛び散った血液なども、すべて燃やした。誰にもむごたらしい母の遺体を見られたくはなかった。


 そして、藤花は立ち上がった。


「人を救うのは人。神様なわけない。方舟様、今までありがとうございました!」


 本部に背を向け、仲間に駆け寄る黒宮藤花は、もう『永遠の方舟』の信者ではない。




「みんなっ! 帰ろうっ!」

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