第87話 ミラージュ

 美咲は、腐神 魔亞苦マークツーのスコープによる追跡を逃れていた。


『なぜか?』


 それは美咲のみことの炎の特性『ミラージュ』による『存在消失』


 完全に視覚では捉えられなくなる。それは機械仕掛けの目であっても同じこと。


 頑なに自分の命の炎の特性を話そうとしなかった美咲。その理由はこの『ミラージュ』のせいではない。


 実は美咲の命の炎、もうひとつの特性がある。『虹色の命の炎』には2つの特性が秘められていた。


 その特性を使い、美咲はなんとかこの状況を打破できないかと考えていた。現在、いちばん腐神から遠い藤花に近づきながら。


『完全に逃げやがったようだな。なんなんだ? あいつは逃げ足がバカ早いのか? 仲間も見捨てるとはっ! 一体あいつは何しに来たんだか。ガガガッ!』








 ガシッ! ガシッ! グシャッ!


『ガーガガガッ! おらっ! おらっ! もっと血を吹き出せっ! 気を失ってないで悲鳴をあげろっ! 泣き叫べっ!! おらっ!』


 魔亞苦・痛は真珠の右手首の切断面を、鋼鉄の足で何度も踏みにじりながら快楽に酔っていた。


 バキバキッ!


 前腕の骨が砕けるッ!


「ぎゃああっ!! うああっー!!」


 激痛で目を覚ました真珠の悲鳴があたりに響くッ!



(待っててね!! 西岡さんっ!!)


 美咲は藤花に駆け寄ると、全身を覆っていたミラージュを解き、今度は右手に命の炎を集中っ!


 バオオオウッ!!


 藤花の肋骨は砕け、肺に食い込んでいた。瀕死の状態ッ!


「藤花さんっ、今、助けるからね!」


 美咲は虹色の命の炎を最大火力で藤花に送り込んだッ!



 シュウウウウウッッッ!!


 キラキラキラキラッ☆


 ボォォオウッ!!


 ドウンッ!!



「んはっ! ごほごほっ!!」


 藤花が咳込みながら目を覚ました。


「よしっ! やったぁっ!」


 美咲の命の炎、もう1つの特性。


  それは『完全回復』


 なぜこの特性を隠さなければいけなかったのか? 美咲は思っていた。この特性の事をを話せば、皆、楽観的になり、無謀な戦い方をしてしまうのではないかと。


 そのせいで油断して死んでしまってはいけない。それを危惧して話せなかったのだ。


 虹色の命の炎は、死人を生き返らせる事はできない。怪我、体力を完全に回復する事ができるのみ。


 父、正男の赤い歯車のタトゥーが無くなった今、美咲の虹色の命の炎がブラック・ナイチンゲールの生命線である事は間違いない。


「美咲ちゃん、ありがと。あの腐神は私がやるからッ!」


 ザンッ!


 藤花 復活っ!!


 真珠から腐神を引き離し、美咲に3人を回復させるっ! ブラック・ナイチンゲール最強の『全開パワー』で魔亞苦・痛を粉砕できるかッ!?

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