第83話 永遠の方舟本部
ブラック・ナイチンゲールの5人は朝を迎えた。昨日とは打って変わって空は曇天模様。夏の日差しがない分、心なしか涼しい。
本日 正午、TK都 永遠の方舟本部
強力な腐神がやって来る。昨日のライノマンとの戦いが頭をよぎる。生き返ったとはいえ、陣平を殺されたという事実、衝撃。
『今日は自分かも知れない』
もう赤い歯車のタトゥーはない。『自分たちの死』は世界の終わりを意味する。全員が新たに覚悟を決めた。
「今日の腐神、どんなのが相手でも勝ってみんなで生きて帰るよおっ! いいっ?」
「あたりまえよっ、イバラっち♡」
「絶対に倒そうね!」
「また死んだらすまんのぉ!」
「死んじゃダメ! エロジジイ!!」
「さあ、みなさん朝食ですよ。きちんと食べてパワーをつけて下さいっ!」
ドーンッ!
5人の前に正男の作った美味しそうな朝食がズラリと並べられた。
『とろけるチーズ増し増しスクランブルエッグトースト 極み』
『高級和牛カリカリベーコン特性ドレッシングレタスサラダ』
『北海道 濃厚つぶつぶコーンスープ』
「すごーい♡ 本当に正男さんって料理が上手ですよね!」
「このぐらいしか私にはできませんから。歯車のタトゥーもなくなってしまいましたし。さっ、どんどん食べてください!」
「はいっ、いただきます!」
すると、朝食を食べながら陣平が藤花に問いかけた。
「クロちゃんよ、永遠の方舟の本部とはそんなにすごい建物なのか?」
「とても煌びやかで立派な建物です。5階建ての神殿って感じでしょうか」
「5階建ての神殿か。しかも、畳300畳の部屋が地下3階まであるんじゃろ?」
「はい。地下シェルターですね」
「信者の数とその財力のギャップはなんなんじゃろうな。永遠の方舟の『教祖様』とはそもそもかなりのお金持ちなのかのう」
「そうかもしれませんね」
藤花は今までそのことについて深く考えたことがなかった。確かに信者の数もさほど多くない新興宗教の永遠の方舟。冷静に考えれば、陣平の言う通りギャップが大きいのも事実。
とはいえ、我が家には神棚はあるものの、怪しい壺や掛け軸などの霊感商法を匂わせる物はなく、高額なお布施をしている両親の姿を見たこともない。
やはり、教祖様は莫大な資産を持つ人間なのだろうと、コーンスープを飲みながら藤花は思った。
全員が朝食を終えた。
その後、ゲリラ豪雨が降ったものの、出発の時刻には止んだ。
「今回は私は自宅で待機します。歯車のタトゥーもありませんし、戦いの邪魔になってはいけませんからね。必ず全員無事に帰ってきて下さいッ!」
「いってきます!」
「お父さん、待っててね!」
「赤い歯車のタトゥー、復活キボンヌだわぁ♡ いってくるわね! アンティー!」
「めちゃうまの晩飯お願いね、正男さんっ!」
「安心して待っておれ。今度は死なんぞお!」
ブラック・ナイチンゲール出陣ッ!
TK都はここV県の隣。新幹線で1時間もかからずに到着。そこから
プシューッ! ガラッ!
生倉は都内でも田舎感たっぷりの地域。住宅よりも企業の工場、墓地が多い。そんな中に広大な敷地を有し、城のように聳える永遠の方舟本部。駅から徒歩10分でたどり着いた。
「大きな建物だー!」
イバラの言う通り、周りにこれ以上の高さの建物はなかった。全体的に白で統一され、正面入口の黒い扉には黄金の装飾が施されていた。玄関前の噴水にはクリスタルの方舟のモニュメントが光り輝いていた。
5人は本部の敷地内へ。
広い駐車場を本部に向かい歩いていく。停まっている車はそれほど多くはない。そう思えるほどに駐車場が広いのだ。
「今回はどこから現れるかしら?」
「サイは空から降ってきたよね?」
全員が腐神の出現に警戒していたが、全然現れる気配がない。アンティキティラの力で研ぎ澄まされた察知能力も、まるで危険を知らせはしない。時刻は正午を過ぎている。そのまま少しずつ本部正面入り口に近づいていく。
『ウイ、ウイィィーンッ!』
ビクゥッ!
5人全員その突然の機械音に驚き、その方に目を向けた瞬間だった。
キュイ──────ンッ!!
アスファルトの地面を滑るように現れた人型のロボットッ!
ブシュウウンッッ!!
それは5人の10メートル前方で急停止。こちらに視線を向けている。その目は生物のそれとは違い、スコープのような形状をしている為、どこを見ているのかハッキリとは分からない。
ウィ、ウイィィ! カシャ!
スコープの目が伸び縮みしながら不気味な機械音を響かせる。
「あ、あれが腐神なの?」
驚く5人に対し、そのロボットは言葉を発した。
『ガガガッ! 俺は腐神
ボオオオオウッ!!
藤花は右手に命の炎を放出ッ!
「ガラクタに未来はない! 潔く粗大ゴミになることね!」
永遠の方舟本部、惨劇の幕が上がる。
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