第80話 見下ろす存在

 藤花の天津てんしん・木村ばりの『あると思います』を聞いたメンバーの期待は高まるばかり。赤い歯車のタトゥーの力が、今、分かるッ!


 イバラは静かに陣平の亡骸を芝生の上に寝かせた。


「正男さん、お願いします。陣さんを……」


「はいっ! やってみましょうっ!」


 藤花、イバラ、美咲、真珠、皆 赤い歯車のタトゥーが回ることを願い、手を合わせる。



 すっ……!



 正男が全員の期待を乗せ、赤い歯車のタトゥーが施された右手を、陣平の左胸にそっと添える。



「アンティキティラの力でっ! 陣平さんの命っ! 蘇りたまえっー!!」

















 しーん……









「だっ、ダメだっ! 回らないっ!」

















 その時っ!!











 どっくんっ!!













「よ、よしっ! 来たっ! 来たぞぉ!! みんなあーっ!」



「本当っ!?」


「やったっ♡」


「思ったとおりっ!」


「エロジジイー!!」





 ガチンッッ!!



 ガタガタガタガタガタガタッッ!!



「回った、回ったーっ!」


 歯車のタトゥーの回転がスピードを上げて陣平に近づいていく!



 ガタガタガタガタガタガタッッ!!


 ギリギリギリギリギリギリッッ!!




「いけ─────ッ!!」













 シュボボオオオオオォォンッッ!!




 陣平を金色こんじきの炎が包んだっ! それと同時に陣平の体が正男の手を離れ宙に浮き始めた。どんどん上昇していく。



 シュボボオウッ!!



 ふわふわ……ふわふわ



 皆、口を開けたままその様子を見ていた。するとっ!





 ギュンギュンギュンッッ!!





 陣平を包む金色の炎がどんどん明るく大きくなっていくっ!



「うわっ! 激しく眩しいっ!」


「陣平さーんっ!!」


「陣ちゃんっ! 戻ってきてー♡」


「これ間違いないじゃんっ!」




















 ボオオオオオォォォォォォンッ!!










 

 爆発の様な音と共に、辺りは白い光に包まれた。




 ガラガラッッ! ガシャン!


 ガシャン! ガシャン……!



 赤い歯車のタトゥーは腕から崩れ落ち、消えた。



「こ、今回は1回だけかっ……!」



 正男が嘆いていると、












 スタッ……!











「おいっ! 正男っ! お前の力か? ワシ生き返ったようじゃのぉ」



「陣平さ……」



「エロジジイ─────ッ!!」


 ハグッッ!!


 美咲は涙で顔をグチャグチャにしながら陣平に飛びついた。


「あっはははっ! 美咲ぃ! ぶん投げて悪かったのうっ!」


「よかったよおおっ! うわーんっ! うわーんっ!」


「あははっ! おいおいっ! 鼻水がすっごいのぉ! ただいまじゃ!」


 皆、目に涙を溜め、笑顔で陣平の周りに集まった。


「おかえり! 陣さんっ! どうなるかと思ったよー!」


「わははっ! お尻ぐらい触らせてあげとけばよかったと後悔したんじゃないか?」


「ほんとにエロいんだからっ! いいよっ! 今なら大サービスでアイドルのお尻触らせてあげるっ♡ ほらほらっ!」


 ぷりん♡


「ほ、本当かえっ!? じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ、遠慮なくっ……」




 モミュ、モミュ♡


 ブーッ!


「ぶっはぁっっ!」


 バタリッ!


 陣平は鼻血を放出して再度、眠りについた。


「あっははっ! また死んだーっ!」


「イバラっちのお尻は殺人級のエロさってわけね♡」


「んもうっ! イバラさんっ! エロジジイを激しく誘惑しないでっ!」


「あははっ! ごめんごめんっ! つい嬉しくてーっ!」







 







「よかったです。陣平さん」


 藤花の目から、涙が流れる。


「クロちゃんよ、見事じゃった。蠍尾旋風が役に立ってよかったわい」


「これからもどんどん陣平流でやっつけちゃいますからっ!」


「そうじゃな。あと、8匹か……」















 ビュ────ウウウッ!!








 アフロタワー屋上から、陣平の復活に沸くブラック・ナイチンゲールを『見下ろす存在』がいた。


 黒い長髪をアイボリーのチュールミックスシュシュで可愛く結び、大小様々な華に彩られたミニスカ風の艶やかな着物を着た美少女。


 その可愛らしさにはそぐわない、不気味な長刀を腰に帯刀している。


『あのひょろメン、死人を生き返らせる能力者なの? 牙皇子様に報告しておかなきゃ』


 ビュ─────ウウッ!


『本当なら今すぐ、この『 天滅丸てんめつまる』で解剖しちゃいたいけど、いま私に下されてる命令はライノマンの監視と敵の実力の見定めだけだし。超残念』


 ガチャリ!


『それにしても、頑丈だけが取り柄のライノマンの頭を真っ二つかー。赤髪さん、明日、もし生き残ったら、綺麗に切り刻んでインスタにアップしてあげるからね♡ キリリリリッ!』



 バッ!   


    ギュンッッ♡



 そう言い残し、長刀を携えた腐神はキュートに飛び去っていった。

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