第79話 あると思います!

 藤花は飛翔で駅に戻り、アンティキティラを連れ、アフロタワーに戻ってきた。何が起きたかは話していない。


 スタッ!!


「正男さんっ……!」


 陣平の亡骸なきがらを抱いたイバラが搾るような声で呼びかける。


「それはっ!? 陣平さん!? な、なんという……!」


 アンティキティラは、ガクッと膝をつき項垂れた。


「アンティー。美咲っちは無事だよ。陣ちゃんがね、命をかけて守ってくれたんだよ」


 真珠は、気を失った美咲をアンティキティラの前にそっと寝かせた。


「美咲を? 陣平さんが? そ、そうだったんですか……」


 正男は額を地面に付け、泣きながら地面を拳で叩いた。


 すると、美咲が目を覚ました。


「エロジジイ……かわい子ちゃんの……ペットになりたいって……今度生まれ変わったら……」


 そう言う美咲の頬を涙が伝う。


「陣さんらしいよね。ははっ……」


「陣ちゃんみたいなエッチなワンコとかいるもんねぇ♡ うふふっ……」


「あはは……」


「うふふ……」


 イバラと真珠も、笑いながら涙が止まらない。


 そんな中、藤花だけは泣く事なく、鋭い目つきで何かを考えている。その視線の先にはがあった。


「美咲ちゃん、残念だけど、まだ陣平さんはかわい子ちゃんのペットにはなれないかもしれない」


 藤花の言葉に皆、驚いた。


「ど、どういう事っ? 藤花!」


 イバラのもっともな質問に、藤花は不思議な感覚を憶えた事を告げる。


「あのね、今、私が正男さんを駅から飛翔で抱えて連れてくる時に感じたんだよ」


「と、藤花っち! そ、それって、まさかっ!?」


 真珠は気づいた。藤花の視線の先のものにっ!
















 







 『赤い歯車のタトゥー』












「西岡さん、正解です。その赤い歯車のタトゥーからビンビン感じたんですよ! 溢れる生命力をっ!!」


「じゃあ、ひょっとして、今回のこの赤い歯車のタトゥーって、死んだ人間を生き返らせる力があるって事っ?」


 イバラのその言葉に、美咲は飛び起きたっ!


「お、お、お、お父さんっ!! お願いっ!! エロジジイを!! い、生き返らせてっ!!」


 正男は左手で右腕のタトゥーをさすりながら藤花を見た。


「黒宮さん。このタトゥーにそんな力が?」


「あると思いますっ!」

(あっ! なんかいま天津てんしん・木村みたいじゃなかった私? ちょっと恥ずかしい……)


 甲賀陣平、復活なるか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る