第78話 亡骸

 ブラック・ナイチンゲールの黒一点、甲賀陣平の死。それは腐神のどんな攻撃を喰らうよりも激しく、抉るように4人の全身に痛みを走らせた。


 特に美咲のショックは凄まじく、藤花の胸で泣きやむことはない。自分に向けて発射されたゲテモノ。それを陣平が自分の命を投げ打って消滅させ、助けてくれたのだ。


「いやだっ! エロジジイっ!エロジジイー! うわーん!!」


「美咲ちゃん……」


 藤花もイバラも真珠も、美咲に声をかける事ができない。


「あっ、あれは……!」


 上空から陣平の亡骸なきがらが落下してくる。


 ビシュンッッ!


 イバラは光速移動で落下地点に行き、数秒後、陣平をキャッチ。


 ガシッッ!!


 全身真っ黒焦げ、両腕は爆発の威力で、もげて失くなっていた。


「陣さっ……うっ!」


 イバラは陣平を抱きしめて泣いた。


 真珠がイバラに向かってゆっくりと歩いていく。そして、陣平の死顔を見た。


「陣ちゃん。かっこいい顔してるわぁ。でも、こんな真っ黒になっちゃって……うっ、ううっ!」


「エ、エロジジイっ!?」


 美咲は藤花から離れ、陣平を抱えるイバラに向かって走っていった。イバラは反射的に後ろを向いて、亡骸を美咲に見せないようにした。


『黒焦げの両腕のない陣平』


 美咲には、とても見せられない。イバラはそう思った。


「イバラさん! エロジジイなんでしょ? ねぇっ? 死んでないよねっ!? ねぇっ、ねぇってばっ!!」


「だ、だめっ! 美咲っ!」


 美咲は、無理矢理イバラの正面にまわり込み、見てしまった。陣平の無残な亡骸を。






「……な、なんで……」












 ドサッッ!


 美咲は気を失って倒れてしまった。


「美咲っち!!」


 真珠は美咲を抱きかかえた。そして藤花に向かって歩いていく。


「藤花っち。飛翔でひとっ飛びしてアンティーを連れて来てくれない?」


「風原さんをですか?」


「うん。この状況、見てもらわないと。陣ちゃんの遺体もどうしたらいいのか……ねぇ」


「そうですね……」



 新生ゼロワールド、残る腐神8体。


 牙皇子狂魔の提案を受け入れ、やってきたB県K市のアフロタワー。そこでの腐神ライノマンとの戦いは想像を超えていた。先の白雪、ヘドロとは比べものにならない戦闘能力。


 それはブラック・ナイチンゲールの実は『精神的支柱』であった陣平を死に至らしめた。その現実の波が、残されたメンバーに何度も打ちつける。


 藤花は飛翔でアンティキティラを連れに駅に向かった。

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