第76話 蠍尾旋風

『さすがに今のスピードは見えなかったぜ。金髪姉ちゃん。ぺっ!』


  イバラを睨みつけながら、血の混じった唾を吐き、ゆっくりとライノマンが起き上がる。


「あたりまえ。私、光速のアイドルなんだから♡」


「イ、イバラちゃん……!」


 藤花も頭から血を流していたが、なんとか起き上がる。


「藤花、大丈夫? 骨は折れてないよねっ?」


「大丈夫。アンティキティラの力はちゃんと防御力も上げてくれてる。このブラック・セラフィムもすごいのかもしんない」


「なるほど。この服、ちゃんとした戦闘服なんだね!」




『クロちゃんよっ!』





 再び、ゲテモノから美咲を守りながら飛んでいる陣平からテレパシーが届いた。


『はいっ! 陣平さんっ!』


『さっきの最後の斧での一撃、蠍尾旋風さそりびせんぷうを応用せいっ!』


『蠍尾旋風……そうか! その手がありましたね!』


『気づいたか。みんなでクロちゃんの『斧の一撃』を喰らわす隙を作るんじゃっ!』





『陣平流・蠍尾旋風』





 藤花が陣平と初めて会ったあの日。陣平は『四神ししん破裏秘パリピ拳』の他にも、いくつかの奥義を伝授していた。その中のひとつが蠍尾旋風である。


『高速前方回転落とし』


 それが蠍尾旋風。


 陣平はそれをかかとではなく、炎獄斧でやれと藤花に言ったのだ。


 威力、スピードは高速回転により倍増する。さすがのライノマンもそれを真剣白刃取りというわけにはいかない。


「はあああっー!! いけえ!!」


 イバラの攻撃のダメージの残るライノマンに、すかさず真珠が炎神大蛇えんしんおおおろち烈火嵐れっかあらしを放つッ!


『ガオオオオオオオオッ!!』


 ブアオオオオ─────ッ!!


『デカいな! 使うしかあるまい』


 ズガッ!!


 ライノマンが巨大な両手の平を、向かってくる炎神大蛇に向けた!


『サイクロンだぁあっ────!!』


 ドヒュウウウウッッ!!


 風が腐神の手に集まっていく! さらに、その風の渦は高速回転し始めた!


 ズギュウウウウゥンッ!!


『消え失せろおおっ!!』


 ドオ───────ンッ!!


 猛烈な勢いで放たれたサイクロンは、炎神大蛇をロックオンッ!


 その2つは激しく激突ッ!!


 ゴゴガガガガガガッッッ!!


 ドォォォオ─────ンッ!!


 凄まじい爆風ッ!!


 真珠は広場の壁まで吹っ飛び、背中を強打ッ!


 ズドンッ!!  


 ドサッ!


「がはっ! う、うぅっ!!」


 炎神大蛇もサイクロンも互いに弾け飛び、タワー正面の強化ガラスにもヒビが入った。


『フシュウッ! あのデカ蛇、サイクロンを消し飛ばしやがった。本当になんなんだ、こいつらは!?』


 神である自分と互角に渡り合うブラック・ナイチンゲールに、疑問と焦りが見えてきた腐神ライノマン。


「大丈夫ですかっ? 西岡さんっ!」


「大丈夫よ! 一瞬 息止まったけどねー!」


 藤花の心配する声に元気に返事をしながら、真珠は蠍尾旋風による必殺の一撃を、腐神に喰らわせる方法を導き出した。


『藤花っち、イバラっち、聞いて。次で決めちゃうわよっ♡』


 テレパシーで2人を鼓舞しながら、真珠は力強く立ち上がった。


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