第69話 提案
夕方の6時ジャスト。ゼロワールド教祖『牙皇子狂魔』がついに動画を公開した。ブラック・ナイチンゲールの5人とアンティキティラは和室に集まり、テレビのニュースでそれを見る事にした。
「ついに来たわね。ちゃんと9人に増えたわけっ!」
「何を語るつもりなのよ、牙皇子!」
「腐神、揃いませんでした〜ってな事にはならないわねぇ……」
「もう、うんこは激しくごめんだよ」
「ほっほっ! じゃな」
ニュースが始まった。
『こんばんは。先程ゼロワールドの動画が公開されました。何が語られるのか? 注目しましょう。ではご覧ください』
テレビ画面に、牙皇子が映った。
『どうも。ゼロワールド、牙皇子狂魔です。みなさん 3日間楽しめましたか? それとも確実な死を前に何もする気になれなかったでしょうか?』
「こいつ……!」
『どちらにしても今日で何事もない日々は終わりです。明日から我々は行動を起こします』
「激しい……」
『手当たり次第、人間を殺す。遂に、この世の終わりが始まるのです』
「終わりの始まり? くだらない!」
『それにあたり、腐神を6人増やすと宣言していましたが、実は5人増えるに留まりました』
「あら、そうなのねぇ?」
『あと1人。まぁ、じっくりと契約候補を探すとして、暫く我々は8人で世界を破壊していきます』
「結局8人で破壊は始まるんですね」
「たぶんじゃが、契約していない残りの1匹が『最強の腐神』の可能性があるのう……」
「陣ちゃんの勘なの?」
「器となる人間にも
『あっ、そうそう。そのつもりだったのですが、いましたね。我々の邪魔をしようとしてる馬鹿どもが……』
その場の全員が、息を飲んだ。
『ブラック・ナイチンゲール? だったかな? あの動画はフェイクなんかじゃない。私にはハッキリと分かった』
「そこはさすがね、牙皇子!」
『貴様らが白雪、ヘドロを倒した連中なのだな。あんな動画をあげて我々に盾突く意志を明確に宣言するとはいい度胸だ。感動ものですらある。そこでブラック・ナイチンゲールの5人に私から『提案』があるのだ』
「提案ってなに?」
「なんじゃ?」
『私は貴様らに非常に興味がある。どちらにせよ、貴様ら5人を殺さなくては我々の念願は叶わない。どうだ? 直接対決といかないか?』
「ちょ、直接対決っ!?」
(8体の腐神と私たち5人で?!)
『怖いか? ブラック・ナイチンゲールよ。それはそうだろう。腐神の実力は分かっているだろうからな』
「激しく分かってるし!」
『とはいえ、大事な手駒である腐神を葬られたのも事実。なので明日は同時に2体の腐神をB県K市の『アフロタワー』に送り込む』
「え? アフロタワー?」
(私、前に行ったことあるな)
『時刻は正午。1時間以内に貴様らが来なかった場合、逃げたとみなし、破壊と殺人を各地で一斉に開始する!』
「逃げるわけがないわぁ」
『白雪とヘドロを倒したぐらいで調子に乗ってもらっては困るのだよ。ブラック・ナイチンゲール。死ぬ覚悟はしてこい。以上だ』
「アルロタワーってどこなの?」
「『アフロタワー』だよ。知らない? イバラちゃん」
「そんなに有名なの? そのタワーって」
「中学生の頃に1回行ったことがあるんだ。タワーの上の方が下より大きくて、まるで『アフロの人』みたいな見た目だからそう呼ばれてるんだよ」
「そうなんだ。明日の正午、そこに2体の腐神が来るんだね」
「しかし分からんの。ワシらを一気に倒すつもりなら牙皇子も含め、全員で来ればよいものを。わざわざ小出しにしておるのには、なんの意味があるんじゃろうか?」
「たぶん、ですが……」
アンティキティラが口を開いた。
「なーに? アンティー」
「風原さん、なにか知ってるんですか?」
「以前、話したかも知れませんが、腐神という存在は数百年、数千年に1体現れるかどうか……」
「はい。でしたね」
「それが今、『8体』プラス『契約に至っていない1体』の計9体がこの人間界に存在してしまっている」
「なるほどのう。そういうことか」
陣平は勘づいた。正男は続ける。
「限界。大勢の腐神が1箇所で戦うというのは不可能なのでしょう。互いの力を打ち消すような現象が起きてしまうんだと思います」
「それは助かるんじゃない? 8体同時はさすがにヤヴァいよ」
「激しく同意」
「明日、2体の腐神が来るということは、ひょっとして……」
「黒宮さんの想像通り、2体までが全力で戦える限界なのでしょう」
明日 正午、B県K市、アフロタワーでの対決となった。果たして待ち受ける腐神とはどのような奴らなのか?
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