第64話 撲滅キャンペーン

 ブゥゥゥーン……!


 真珠が向かっていたのはこの町にある反社会勢力の事務所。麗亜をいじめ、不登校に追い込んだ毒島ぶすじま晴翔はるとの父親はそこの組員であった。


(早速、反社撲滅キャンペーンといきますかねぇ♡)


 真珠はアンティキティラの力を得て有頂天になっていた。余命4ヶ月とはいえ、その4ヶ月をまるで漫画の主人公のような力を使って過ごせるのだから。


 しかも、大嫌いな反社会勢力を一掃するという夢が実現できるという現実に胸が高鳴っていた。


(ルンルン気分だわっ! まったく日本の警察は生ぬるいのよ! あんなヤクザ? 暴力団? チンピラ? すべて牢獄にぶち込めばいいのよ!)


 ブウウウウンッ!


(ろくなもんじゃないんだから! 悪さばっかしてんだからさ、するに決まってるんだからさ! なんでのさばらせてるのか意味が分からない!)


 ブウンッ!


(町に猪だの熊だのが出てきたら大騒ぎして殺すくせにさ、私に言わせればそれ以上に反社の方が殺すに値するっての!)


 ブブブブブ……


(子供の頃からウザかったわぁ。あの威圧的で偉そうな態度をする奴ら。来月には仕事を辞めて全国の組織をひとつひとつ潰して回るっ! 必ず息の根を止めてやるわぁ!)


 信号が青に変わった。


 ブブゥゥッ!


 ブゥゥゥーンッッ!











 ブブブブブ……ウンッ!


 カチャン!



 暴力団 山江やまえ組事務所。


「ここね、着いたわ。無駄に立派な建物ね」

(まずは麗亜をいじめた毒島の親を探すわ)


 ピンポーン


 真珠は躊躇なく山江組事務所のインターホンを押した。


『どちらさん?』


「あっ、どーも。西岡と申しますが毒島さんっていないです?」


『いませんよ』


 ガチャ


「まっ、そんな対応よね。仕方ないなぁ。勝手に上がらせてもらうわぁ」


 ボボォンッ!


 ボオオオオウ!


 真珠は命の炎を放出っ! ブラックスーツに身を包んだ。


「さてと……」


 グッ……!


 ガチャンッッ!


 バキィィーンッッ!!


 真珠は鍵を開けることもなく、ドアノブを回すこともなく玄関を壊して開けた。さすがにその音に驚き組員がゾロゾロと4人やって来た。


「誰だお前っ! ここがどこか分かってんのかっ! オイッッ!」


「ねぇ、毒島さんは? いないの?」


「あんた誰だい? 毒島に用があるのか?」


「まあね。あんた達にも用が無いわけでもないけどねぇ」


 その言葉に組員たちの目の色が変わった。


「おいこら。女だからってなめてるとタダじゃおかんぞ。ああん?」


「あっはは! すごんでるっ! ウケるっ! バカみたいっ!」


 真珠は手を叩いて笑い出した。その様子に組員たちはこの女は『イカれたバカ』だと決めこんだ。


「おい! とりあえず奥に連れてって縛っておけ! なんか分からんが玄関も壊されてる。弁償はしてもらわねぇとな。多少太ってるが案外顔はかわいいから稼げるかもしれねぇ」


「あら? 私かわいい? ありがとう♡ あとでサービスしてあげるわね」


「ホント何なんだこいつは? 気色わりぃ」


 真珠は事務所内に連れて行かれ、両手を後ろに縛られてソファーに座らされた。


「いないの? 毒島晴翔の親は? 話があるのよ」


「毒島なら今に戻ってくる。話したけりゃ話せばいい。だが、ちゃんと金はもらわねぇと困る。玄関を壊した弁償代。500万! 頼むぜ、姉ちゃん」


「500万ねぇ……」


「ねえなら いい働き口を紹介してやる。感謝してほしいねぇ」


「ふわぁ〜ぁ……毒島が来たら起こしてね」


 真珠はそのまま寝た。もちろん寝たフリである。


(早く帰って来いっ! 毒島っ!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る