第11章 西岡真珠という女

第60話 息子

 辺りは暗くなり始めていた。時刻は夜の7時になろうとしている。


「さて、動画も無事撮れましたし、できれば今夜からはみなさんには我が家で寝泊まりして頂きたい。古いですが部屋数はありますので。たぶん3日後までゼロワールドが仕掛けてくる事はないと思いますが、念の為に力は集結しておきたいと考えます」


「ワ、ワシは寺に戻ろうかのお……」

(エ、エッチなDVD! まだ観てないやつがあるのじゃ……)


「ダメッ! エロジジイはここにいるのッ! 一応、男なんだから、いざと言うときは激しく頼るから!」

(やったー♡ エロジジイと一緒にいられるぅ〜! お父さんナイス提案!)


「美咲にそこまで言われては、帰れんのう……」

(待ってておくれ! 美人OL嬉し恥ずかし残業性交パート2新入社員編……)


「私もここにいさせてもらおっかな。ママにはある程度話はしてあるから。電話でこれからの事情は伝える」


「両親とも、永遠の方舟の本部にいるようなので、私もここにいます」


 西岡真珠は、夫から送られてきていたLINEを読んでいた。

 

 そして……


「とりあえず、私は一旦帰るわ。夫と息子に直接、事情を話してくる」


「分かりました。西岡さんもできるだけ早めに戻ってきて下さい」


「分かったわ♡ で、藤花っち。ダメ元でお願いがあるんだけど」


 真珠が、かわいい瞳で藤花をみつめる。


「私に? なんですか?」


「その『方舟水晶のネックレス』しばらく貸して欲しいの。だめかなぁ?」


「えっ!?」


「息子に持たせておいたら安心かなって。勝手過ぎるよね。ごめん」


「息子さんに?」


「藤花っちにとって大事な物を、私ったら……」


 ジャラ……


 藤花はネックレスを外し、真珠の手の中に包み込ませた。


「このネックレス、大事な息子さんの為にお貸しします。今の私にはなくても平気ですからっ」


「本当? めっちゃありがとう。この恩は忘れないよ」


 真珠はそう言うと、皆に手を振り、乗ってきたスクーターで帰って行った。











 ブーーーーーーンンッッッ!







 西岡真珠は子供の頃からモテモテ人生。22歳の時、合コンで知り合った美容師の男性と1年の交際の後、結婚。2年後、長男『麗亜れいあ』を授かる。現在、麗亜は10歳。真珠は麗亜が可愛くて仕方がなかった。



 しかし、麗亜は『いじめ』の標的となり不登校状態。すでに3ヶ月、学校に行けてなかった。


 いつの時代もなくならない陰湿ないじめ。子供とはいえ、やる事は大人と大差ない。一体何がそんな『モンスターチルドレン』を形成してしまうのか?


 『家庭環境』


 それ以外ないと西岡真珠は考える。直接、虐待や体罰、ネグレクトと言った問題がなかったとしても、親の生活態度や暴言、そんなモノが子供の心をむしばんでいくんだと。


 親がやったり言ったりしている事を子供は真似る。そういう性質が子供にはある。反面教師にしてくれればよいのだが、なかなかそこまでの子はいない。


 麗亜が不登校になって2ヶ月の頃、体調のよくなってきた息子に真珠は何が起きたのか聞いた。その話の中に出てきた1人のクラスメイトの名前……


 『毒島ぶすじま晴翔はると


 親は、反社会勢力である。


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